救護所へ向かうスズの護衛をしながら鬼の救助へと戻る朽森。
他愛のない会話で相手を笑顔にできるスキルは、これまで数多の女性たちを相手にしてきた彼の特技だ。
"チャラい"・"クズ"と評されることもあるが、時と場合によってはとても有効なもので…
すぐにいろいろ考え過ぎてしまうスズを大いに助けてくれていた。
第75話 高円寺奪還作戦➄
2人で会話をしながら静かな街を進んでいると、不意に朽森が足を止める。
つられて止まったスズが見上げれば、彼は何か考えを巡らせているようだった。
「(逃げ込んだ子供がいるかもしれねぇ…学校も行っとくか)」
「紫苑先輩?」
「…スズ、ちょっとだけ寄り道したいんだけどいい?」
「もちろんです!…あ、でも邪魔になるようでしたらここで別れますよ?」
「それはダメ。俺がまだ一緒にいたい」
「ちょっ、きゅ、急にドキドキさせないでください…!」
「(このぐらいでドキドキしちゃうんだ)…可愛い」
「何ですか!?ま、また何か言いました!?」
「ん〜…秘密」
楽しそうに笑う先輩にからかわれることで、スズの体温はまた少し上がる。
その熱が冷めた頃に辿り着いたのは、とある学校であった。
ここへ来た理由を説明しながら校内を捜索するも、人の気配はまるで感じられなかった。
「静かだな」
「そうですね。全員ちゃんと逃げられたってことかな…」
「だな。…じゃああと屋上チラッと見て終わりにすっか」
「押忍!」
そんな言葉を交わしながら屋上へと出てきたスズと朽森。
やはりここも静かで、誰かがいるような気配はなかった。
そうとなれば長居は無用。早々に見回りを終え、屋上を出ようとしたのだが…
突如空中に現れたネジが2人に襲いかかってきた。
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爆風が落ち着くと、そこにはさっきまではいなかった人物の姿があった。
攻撃を回避するため横抱きにしていたスズを優しく降ろしながら、朽森は見覚えのある白スーツに視線を向ける。
「(ネジ…てことは…)」
「言ったろ?必ず殺しにくるって」
「男の約束なんか、酒飲みの断酒宣言くらい意味ないもんなのにな」
「桃太郎…!先輩、知ってる顔なんですか?」
「桃の本部から抜けた時あったじゃん?あん時にちょっと絡まれちゃってさ」
「そうだったんですか…!」
「(こいつがいるってことは…)」
「能力は封じたよ」
「もう1人!?」
ネジを操る桃太郎・桃鐘銀に加え、その仲間である桃坂国領までもが姿を現す。
体外の血を操る彼の能力で、朽森の血蝕解放は封じられてしまった。
国領はそのまま視線をスズの方へと向ける。
彼女は、自分たちが尊敬してやまない桃際右京が欲している人物だ。
「銀、女の方は死なない程度にだぞ?生きたまま連れて帰る」
「分かってる」
「えっ?」
「何、お前らもスズのこと狙ってんの?」
「そうだ。だからお前ごときに時間は使えない。早急に死ね」
「三下の台詞だな。多分殺せないぜ?」
「遺言にしてはしょうもないな」
銀が造り出す複数の銃口を持つ大型の武器が、ゆっくりと標的へ照準を合わせる。
"逃げないと!"と慌てるスズに笑みを向けた朽森は、まるでデート中かのように恋人繋ぎで彼女の手を握った。
「せ、先輩?」
「そんな不安そうな顔しないで大丈夫」
「いや、でも…!」
「俺のこと信じて?」
「! …はい!」
朽森の真っ直ぐな目と言葉に、スズは一転して表情を変える。
パッと笑顔を見せながら返事をすると、信頼の証として強く手を握り返した。
と、次の瞬間…無数の銃弾が襲いかかってくる。
思わず目を閉じたスズだったが、風と煙があたるのを感じただけで事態が収まったのを受け、不思議そうに首を傾げる。
「!」
「ほらな。スズ、目開けていいよ」
「…先輩、大丈夫ですか!?」
「うん、この通りね」
「(何故…!?)」
「テメェらどこで騒いでんだ!子供の学び舎だぞボケがぁ!退学モンだな、おぉい!」
「大我先輩!!」
聞き覚えのある声の方を見上げれば、貯水タンクが建っている一段高い場所に頼れる副隊長が立っていた。
軽やかに降り立った百鬼は開口一番、可愛がっている後輩のことを気にかける。
「スズ無事か?ケガしてねぇだろうな!?」
「大丈夫です!ありがとうございます!」
「何故来るとわかった?」
「雰囲気」
「何だそれ」
「付き合いがなげぇだけだ」
自分の両脇に立つ2人の先輩たちの絆に、スズは誇らしげに微笑むのだった。
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