2対2という構図で始まった屋上での戦い。
スズは邪魔にならぬよう今のうちに避難場所へ向かおうとするが、朽森はなかなか手を離してくれない。
そうこうしているうちに、また国領が血を封じ銀が攻撃するという態勢が整ってしまう。
「馬鹿さは伝わったよ。グラサン見殺しにすれば隙をつけたかもしれないのに。銀!2人とも能力を封じた!殺せ!」
「仲間を見殺しにする選択肢は俺にはねぇなぁ!」
「大我先輩!あの人何か血を操れるみたいで…!」
「任せとけ!スズには傷一つ負わせねぇ!俺に護られてろ!」
「ありがとうございます!…って、そうじゃなくて!紫苑先輩!」
「平気平気〜それより記録のために、大我の能力しっかり見ときな?さっき目瞑ってたから見えなかったでしょ」
「あ、確かに。で、でも!あの人がいたら血を使えなくなるんじゃ…」
「俺みたいに血をたくさん使う奴はね」
「?」
「ごちゃごちゃ喋ってるうちに…仲良く逝けよ!」
そう言って、さっき造った大型の武器を再び3人へ向ける銀。
手を繋がれたまま百鬼の方を向いたスズは、彼が傷つけた指をパチンと鳴らすのを目にした。
直後、3人の前に亀甲文様のような盾が現れる。
銃撃をすべて防ぐこの血のバリアこそ、百鬼の血蝕解放・守護ノ神代であった。
この能力の特徴は、少量の血液でも力を発動させられること。
故に国領の能力に影響されないというわけだ。
「大我先輩、すごいです!優しい先輩にピッタリな力ですね!」
「そんなん言われたの初めてだから照れくせぇな…!」
「照れてる暇ねぇぞ。大我」
「おぅ。テメェの相手は俺だぁ!」
「国領!そいつを頼む!」
「んじゃバラけるか」
「追うけど問題は?」
「ねぇ」
屋上の柵を超えて飛び降りて行く国領を追おうとする百鬼。
そんな彼を見送るように親指で行き先を示した朽森は、続けてスズを振り返る。
「スズ、ごめんな。ちょっとだけ待ってて?」
「はい!避難場所で待ってます」
「うん。すぐ終わらせて迎えに行く」
ようやく離した手で優しくスズの頭を撫でると、朽森は銀と向かい合った。
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学校から一番近い緊急避難場所で待機してから30分ほどが経った頃…
戦いを終えた百鬼から連絡が入る。
『スズ!こっちは終わった。1人逃げ遅れた奴がいたから、念のため診てやってくれるか?』
「分かりました!すぐ向かいます!」
指示された体育館に向かえば、入口に百鬼と共に1人の女性の姿があった。
百鬼の見た目のインパクトに圧倒されていたのか、スズが声をかけると彼女は一気に安心したような表情になる。
ザッと全身を診て問題ないことを確認してから鬼の隊員に引き渡せば、無事に任務完了だ。
「お疲れ様でした!大我先輩はケガしてないですか?」
「してるが、大したことねぇ!指がちょっと吹っ飛んだぐらいだ!」
「えっ!?大したことありますよ!見せてください!」
その場に百鬼を座らせ、早速治療を始めるスズ。
申告通り左手の第4指と5指が失われており、2指3指は残ってはいるものの変な方向に曲がっていて明らかに骨折していた。
自分の状態を過小評価する先輩に、スズは少し怒り気味に言葉をかける。
「左手ほとんど使えない状態じゃないですか…!痛みだって相当なはずです」
「まぁそうだけど、命がある方が大事だろ?」
「もちろんそうです!そうですけど…私にとってこのケガは…大したことなんです」
「スズ…?」
「例えば仲間の誰かが桃との戦いから帰って来た時…生きてて良かったって、安心すると思います。
でもその人の体のどこかが欠損してたり、ぐちゃぐちゃになってたら…
感じてた安心は一瞬でなくなって、代わりにツラさや悲しさ、それに怒りも…生まれてくると思うんです。
生きて帰ってくるのは大前提です。その上で、少しでも傷やケガがない状態で帰って来て欲しい。
待ってる側は常にそう願ってます。だから…自分のことももっと大事にしてください…!」
治療が終わり元に戻った左手をギュっと握り締めながら、スズはそう言って真っ直ぐに百鬼を見つめる。
その目が少し潤んでいるのは、それだけ想いが強いという証。
百鬼は後輩の手を握り返すと、静かに話し始めた。
「…スズの言う通りだわ」
「えっ」
「さっきの例え話、もしスズだったらって想像したらよ……ブチ切れそうになった」
「!」
「前線で俺らのことを護ってくれるお前が傷だらけになって帰って来た時、"生きてて良かった"なんて思えねぇ。
相手を同じ目にあわせるまで気が済まねぇし、それ以上のことをやるまで止まらねぇと思う。
まぁここまで過激じゃねぇとしても、今さっきスズに似たような想いさせてたんだと思うと…申し訳ねぇなって思った」
「大我先輩…」
「ごめんな。これからは、スズに笑顔で迎えてもらえるような状態で帰って来る。約束だ!」
「はい!」
治った左手をグーにして差し出せば、スズも元気な返事と共に拳をぶつけた。
笑顔を向け合う2人は、不意に聞こえた銃撃音で表情を変える。
音の発生源は、朽森がいる屋上であった。
to be continued...
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