「嫌いだよ、お前みたいなタイプは」

「別に好かれたくないな」

「最初に言った通り、俺は血を使わないから安心しろ」

「舐めんな!」


雨脚が強まる中、皇后崎はそう言って、仕込み傘を構える無陀野へと向かって行った。





第9話 お前の父親 / 協力しろ





2人が戦う様子を、地面に倒れ込んだまま見つめていた一ノ瀬。

そんな彼の元に、屏風ヶ浦の応急処置を終えた天使が舞い降りる。


「四季、体の具合どう?」

「スズ!あー…まだ起き上がれねぇけど、スズの顔見たら「私の顔にそんな力ないからね?」

「あるよ!少なくとも俺にとってはある!」

「ふふっ。分かった。じゃあ本当に治すから、少しじっとしててね」


微笑むスズにそう言われると、一ノ瀬は静かに返事をしてから安心したように目を閉じた。

彼の場合、外傷はそこまで酷くない。

致命傷になっているのは、屏風ヶ浦と同様、血液量の急激な減少だった。

それを確認したスズは一ノ瀬の手のひらに少し傷をつけ、その手を握りながら自身の血を送り込む。

スズの血液には体の一部を生成する力がある。

よって彼の体内に入ったスズの血液は、一ノ瀬の血と結合してその量を倍に増やすことができるのだ。


「…何かスズに手握られてると安心する」

「そう?なら良かった。」

「そうだ、屏風ヶ浦は?大丈夫なのか?」

「一旦はね。かなり血を消費してたから、今の四季と同じように輸血しておいた。でも早く専門の先生に診てもらった方がいいと思う」

「スズが診ただけじゃダメなの?」

「私も多少は医学のこと教えてもらったけど、医者ではないからね。細かい部分までは診れないんだ」

「そんな悲しそうな顔すんなよ。俺はスズに診てもらっただけで元気になるぞ?」

「ありがと!私も四季と話してると元気もらえる」


ふわっと笑ったスズに、一ノ瀬は思わず目を奪われる。

それはあの日、彼がスズを天使と思うキッカケになった笑顔だった。

その笑顔をもう一度、あの日よりも近くで見られたことに、一ノ瀬は無性に嬉しくなるのだった。


「急にニコニコしてどうしたの?」

「ん〜?スズのその笑った顔好きだな〜と思ってさ!」

「え、な、何言ってんの…!病人は、お、大人しく寝てなさい!」


照れ臭そうに自分の目元を手で覆ってくるスズに、一ノ瀬はまた笑顔になるのだった。



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