とある日の午前中…
学園内の資料室で調べ物をしている無陀野の姿があった。
部屋に備え付けてある簡易的な机とイスに座り、尋常でないスピードで必要な情報を探し続けている彼。
そして部屋にはもう1人、その秘書であるスズの姿もある。
ボスが手を休めることなく作業ができるように、情報が載っていそうな資料を片っ端から集めては持ってくるのが役目だ。
そんな2人が、"ガチャン"という音とともに資料室に閉じ込められてしまう。
ドアの下にある隙間から差し込まれた1枚の紙には、ここを出るための条件が書かれていた。
膝に乗って向かい合わないと出られない部屋 -無陀野編-
3時間後…
無事に仕事は完了し、スズと無陀野は部屋を出るべくドアの方へと向かう。
だが押しても引いても叩いても…鍵がないはずのドアは一向に開く気配がなかった。
「…無人先生、閉じ込められたかもしれません」
「そうみたいだな。…ん?何か落ちてる」
「メモ?誰かの落とし物ですかね?」
「…」
サッと内容を読んだ無陀野はスズからの問いかけには答えず、拾った紙を無言で彼女に手渡す。
その目にはさっきまではなかった疲労の色が伺えた。
「…えっ!?何これ!」
「何かは分からないが、面倒なことに巻き込まれたのは間違いないな」
「ひ、膝に乗って、む、向かい合う…」
「考えても時間の無駄だ。さっさと済ませて出るぞ」
「そ、そうですね…!よし、じゃあ先生どうぞ!私の膝を使ってください!」
「冗談を言ってる場合じゃない。…さっきのイスを使うか」
意気込んだスズをスルーした無陀野は、先程まで自分が座っていた簡易的なイスへと向かう。
ギシッと音を立てて座ると、ポンポンと自身の太ももを叩いてスズに視線を向けた。
「早く乗れ」
「私がですか!?」
「他に誰がいる」
「いや、待ってください!ちょ、ちょっと心の準備が…!」
「そんなに緊張することか?」
「しますよ!初めてなんですから!」
そう叫んだスズは、その場でウロウロしながら深呼吸を繰り返す。
大切にしている秘書の言うことなので、しばし待機する無陀野。
だが3分も経たぬうちに我慢できなくなり、目の前にいる少女の腰を掴みひょいと持ち上げる。
そして何が起きたのか理解できていないスズを、そのまま自分の膝の上に乗せるのだった。
「ひっ!な、無人先生!?」
「悪い、待ちきれなかった」
「ち、近いです…!」
「おい、あまり体を反らせるな。落ちるぞ」
「だ、だって、目の前に、先生が…!」
「嫌なのか?」
「嫌とかじゃなくて!その、ちょ、直視できない…!」
「俺はスズの顔が近くで見れて嬉しいけどな」
「へ?」
「言っただろ?お前に触れたいと思うことが多くなったと」
「!」
「最初は面倒だと思ったが、誰にも邪魔されずにスズとこういう時間が過ごせるなら…悪くないかもな」
「先生…!」
「ふっ。これでドアは開いてるだろう。けど…もう少しこのままでいたい。俺のワガママを聞いてくれるか?」
「! もちろんです!秘書ですから!」
明るい声でそう言ったスズは、恥ずかしそうに笑う。
そんな彼女への愛おしさが増し、腰を支えている手に力が入る無陀野なのであった。
fin.
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