ベンチに並んで座るスズと皇后崎。

無陀野の到着が早かったお陰で大きなケガはなく、治療自体は10分もかからずに終わった。

残りの2人を待つ間、辺りは先程までの殺伐とした空気が嘘のように穏やかな時間が流れていた。

ボーッと空を眺めるスズに少し視線を向けてから、皇后崎は不意に口を開く。


「…カッコ悪ぃとこ見せたな」

「え?」

「あんな一方的にやられるとか…ダサいにも程があんだろ」

「…私はカッコ悪いところも、ダサいところも見てない。私が見たのは…迅が本気でお父さんと向き合ってる姿だけ。

 お母様とお姉さんのことを心から大切に想ってる、優しくてあったかい男の子の姿だけだよ」

「…」

「でもあの人は…越えなきゃいけないね」

「あぁ。だからもっと…強くならねぇと」

「なれるよ。今の迅なら絶対」


そう言って、ふわっと笑いかけるスズ。

その温かく優しい表情に、皇后崎は思わず彼女の頬へ手を伸ばした。


「迅…?」

「お前の笑った顔さ、どことなく姉さんに似てんだ」

「え、そうなの?」

「うん。なんつーか…見てると安心するし、護りたいって…思う」

「へへっ。嬉しいな…!」

「だから俺は、スズの笑顔が……いや、笑顔だけじゃねぇか」

「ん?」


小さく呟いた声が聞こえず、スズは皇后崎の顔を覗き込みながら声をかける。

下を向き少し考え込んだ後、彼は決意を宿した目で想い人の方へ顔を向けた。


「本当は、もっと心も体も強くなってから伝えようって思ってたけど…

 こういうタイミングが次いつ来るかわかんねぇし、気持ち抑えとくのも限界近いから…今伝えるわ。

 俺は、スズの笑顔と…スズのことが好きだ」

「!」

「今まであいつへの復讐しか頭の中になかったのに…羅刹でスズに出会って、一緒に過ごして…

 気づいたらお前のこと目で追ってる自分がいて、最初は戸惑った。こんな状態になんの、初めてだったから。

 俺の目的のためには必要ない感情だから、必死になくそうとしたけど…それも無理だった。

 スズに頼られると嬉しいし、他の男と喋ってるとイラつくしで…お前を好きな気持ちが止めらんなかった」

「迅…」

「急にこんなこと伝えて悪ぃ。でも…すぐ返事くれとかそういう面倒くせぇこと言わねぇから、スズのこと好きでいていいか?」

「う、うん!あの、えーと、その、ありがとう…!気持ち伝えてくれて、嬉しかった」

「! 俺の方こそ、いつもありがとな」


真っ赤な顔のスズと、ほんのり頬を染めた皇后崎。

一ノ瀬と無陀野が戻るまでに2人の顔が元に戻ったかは、ご想像にお任せすることにしよう。



to be continued...



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