ビルの周囲には、建物内から逃げてきた者や別場所からの避難者たちが大勢いた。

元気な人たちには安全な避難経路を伝え、ケガをした人にはその場で治療を行う。

屋上からの大きな音に不安を募らせながらも、スズはいつも通り冷静に事に当たっていた。


「…よしっ、これでOK!痛くなかった?」

「平気!お姉ちゃんすげぇや!」

「まぁね〜!」

「本当にありがとうございました…!助かりました」

「とんでもないです!引き続きお気をつけて」

「はい。ほら、あんたもお礼言いなさい!」

「ありがと!…ん?」

「どうかした?」

「何か木が飛んでる!」

「えっ?」


治療していた子供が指差す方へ目を向ければ、そこには確かに大木のようなものが浮かんでいた。

禍々しいその姿形から、間違いなく良いものではないことが分かる。

会話をしていた親子に避難を促し、スズ自身も少し距離を取って大木の行方を見守った。

そしてスズが移動して上を見上げた瞬間、大木は無陀野がいると思われるビルに落下し轟音を響かせた。


「無人先生…!」


大丈夫だと信じつつも、スズは急いで破壊されたビルの下へと向かう。

彼女が到着した時、ビル周辺は大爆発が起きた後のような状態になっていた。

窓ガラスは1つ残らず割れ、柱という柱が折れ曲がり、道路も穴や亀裂だらけだ。

その中心に1人の人物が立っていた。


「先生!!」

「スズ。そっちは終わったか?」

「はい。全員避難と治療完了しました」

「よくやった」

「…先生、ケガ大丈夫ですか?」

「あぁ、大したこと…いや、あとで治療を頼めるか?」

「もちろんです。無事で良かった…」

「ありがとう」


ホッと息を吐くスズの頭を優しく撫でてから、無陀野はその場を後にしようと歩き出す。

だがそんな彼の動きを止めようとする声が聞こえてくる。


「待てよ…帰るには早すぎだろ…まだ…序盤だぜ?」

「(桜介さんも月詠さんも、あんなボロボロに…)」

「寝てればいいものを」

「そうゆうわけにはいかないのさ…」

「任務のためか」

「可愛い後輩のためさ…たいした話じゃないけど…立ち上がる理由には十分さ…」

「そうか…立ち塞がる覚悟があるなら…そのいのち摘ませてもらおうか。…スズ、下がっていろ」

「はい…あ、あの…先生「スズ!」

「!」

「心配すんな!俺らは大丈夫だ!」

「その表情だけで十分だよ」


彼ら2人には、助けられ心配してもらった過去がある。

本人たちが言うように、戦うことは好きなのだろう。

だが鬼を無差別に殺す他の桃太郎とは違う…接する時間や機会は少ないが、スズはそう確信していた。

だからこそ、許されるなら生きていて欲しいと思ってしまう。

そんな複雑な思いで3人の男たちを見つめていたスズ。

彼女の耳に待ち望んだ声が聞こえてきたのは、無陀野の攻撃が火を噴く寸前のことだった。



to be continued...



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