並んでココアを飲みながら、穏やかな時間を過ごす援護部隊コンビ。

想いを寄せる女の子との時間は何物にも代えがたく、花魁坂は自分の心身が癒されるのを感じていた。

それに伴い眠気も強くなってきた頃、淀川の時に続きまたしてもスズが爆弾を落とす。





第83話 容疑 ー後ー





「あの…」

「ん〜?」

「京夜先生も、手握ってると…変な気持ちになりますか…?」

「ぶふっ!えっ!?な、何急に…!」

「あ、いや、その…そういうことを言ってる人が、いたので…京夜先生もそうなのかな?って」

「ちなみに言ってたのって誰?」

「真澄さんです」

「(まっすー…スズにどんな絡み方してんのよ…)」

「京夜先生…?」

「あ、ごめんね。んー…俺はどっちかっていうと安心するかな」

「安心?」

「うん。何か思いが通じてる感じがして好きなんだ、スズと手繋ぐの」


そう言って笑いかけながら、花魁坂は優しくスズの手を握った。

向けられた笑顔のキレイさに目を奪われている間に、師匠はふわ〜っと大きなあくびをする。

つられるようにスズからも出てくるあくびに、2人は揃って笑顔になった。


「ふふっ。一旦寝よっか」

「そうですね!」

「(…まっすーがそういう言動するなら、俺もちょっとぐらい良いよね)」

「! 先生?」


いたずらっ子のような表情のまま、花魁坂はスズの肩にそっと頭を乗せた。

想い人の体温や匂いをより身近に感じたことで、彼はあっという間に睡魔に負けてしまう。

故にドキドキしながらスズが横を見た時には、師匠が気持ち良さそうに寝息を立てていた。


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20分ほど経った頃、花魁坂は不意に目を覚ます。

最初に気づいたのは、自分が何故か仰向けになっていること。

お陰で座って寝るよりも疲れが取れ、何とも有意義な時間を過ごせたのだ。

だがそれはおかしい。眠る直前は確かスズと並んで座っていたはず…

そう思い顔を動かすと、花魁坂は自分の目線の先に彼女の寝顔を見つける。

そこで初めて、自分が膝枕をしてもらっていることを知ったのだった。


「(え、嘘…嬉しいし気持ちいいし最高だけど…何で!?)」


いつもの飄々とした雰囲気からは想像できないほどテンパる花魁坂だが、急に動いてはスズを起こしてしまう。

静かに深呼吸を繰り返し落ち着きを取り戻すと、改めて今の状況を整理する。

自分の性格上、好きな子がいるのにソファに倒れ込むようなことはしない。

となると必然的に、この状況はスズが作り出したことになる。

その証拠に、お腹の上に置いていた手に彼女の手が重ねられていた。

眠る前の約束を覚えていて、それを継続するためにやってくれたのだと直感した。


「(本当に優しい子だな…俺が惚れた子は)ありが…」


言いかけていた言葉を止め、少し視線を外す花魁坂。

"ありがとう"は起きてからいくらでも伝えられる。

なら今は、起きてる時には伝えられない言葉を…と思ったのだ。

重ねられていた手を握り返し、もう一度視線を彼女の方へ向ける。


「……好きだよ、スズ」


とても小さな声で紡がれた愛の言葉は、今もこれから先も彼女に届くことはない。

それでも花魁坂の表情は穏やかで、口元には笑みが浮かんでいた。

スズのお腹にすり寄るように頭を動かしてから、彼は再び眠りに落ちていった。



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