傍でスズが見守る中、同期2人は無陀野へと攻撃を仕掛ける。

背後の皇后崎を難なく避けた無陀野だったが、直後彼の体には縄が巻かれていた。





第10話 お前がゴールしろ





無陀野を縛る縄の先を握り締め、手を組んだ一ノ瀬と皇后崎は全力で引っ張る。

疲れ果てている体を奮い立たせ、2人は無陀野との持久戦に臨んだ。


「たぐりよせろぉぉ!」

「(根比べか…)」

「(先生細く見えるけど、ちょっとやそっとじゃ動かないぞ…!頑張れ!)」

「皇后崎!もっと引っ張れオラぁ!もっともっと!」

「お前本当…うるさい…!」

「うおおぉ!」

「(体力がMAXなら希望はあったな)」


その時、無陀野に向かって血の歯車が飛んでくる。

皇后崎が最後の力を振り絞って出した攻撃によって、無陀野は一瞬体勢を崩した。

その隙を突いて、一ノ瀬は彼の手に握られているボールに向かって走り、手を伸ばす。

だがボールに手が触れそうになる寸前、無陀野は不意にそれを皇后崎の方へと転がした。


「(うわっ!すごい展開…!このままボール取られたら負けちゃうぞ、四季!)」

「(残り3分弱…全力で走ればゴールに間に合う可能性がある。俺からボールが離れてる最後のチャンスだ…

 皇后崎がボールを持って走ったら、恐らく四季も奪おうと追いかける。その奪い合いの隙に奪い返す!)」

「よっしゃあぁ!早く取ってゴールしちまえぇ!」

「「!?」」「あれ…もしかして四季、ルール分かってない…?」

「はっはー!どうよ!?先生からボール取れたぜ!」

「あのままゴールしたら、皇后崎だけ勝ちだぞ」


やはりというか何というか、一ノ瀬はルールを理解していなかった。

無陀野の言葉に愕然とし、走り去った皇后崎を叫びながら見つめる彼の姿に、スズは笑みを漏らす。

そしてスルスルと縄を解いていた無陀野の元へと駆け寄るのだった。


「先生、大丈夫ですか?」

「あぁ。にしても、あいつの馬鹿さは計算外だった」

「ふふっ。まさかの展開でビックリしました。でも嫌いじゃないです、四季のあの性格」

「そうだな。まぁ言い方を変えれば、損得を考えない…目の前のことに真っ直ぐな奴ってところか」

「はい!」

「…スズ、お前随分濡れてるが寒くないか?」

「大丈夫です!ありがとうございます!先生、相変わらず優しいですね」

「お前にだけだ」

「えっ…!」

「ん?どうかしたか?」

「あ、いえ、何でもないです…!」


かなり大胆なことを言ったはずなのだが、言った本人は全く気づいていないようで…

言われた側のスズだけが、1人赤くなる頬を冷ますのだった。



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