一旦神社へと場所を移した若者4人。

無陀野と通信を繋いでから現状を報告し、合わせて全員の安否確認も行う。

特にスズが無事でいるかどうかは、無陀野にとって一番の懸念事項だった。


『スズ、頑張り過ぎてないか?』

「! 大丈夫です!ちゃんと自分のことも大事にしてます」

『ん、いい子だ。お前のお陰でかなり被害が抑えられてる。引き続き頼むぞ』

「了解!無人先生はケガとかしてないですか?」

『問題ない。もし傷を負ったら必ずスズに連絡を入れるから心配するな』

「はい!すぐ駆けつけます!」


スズの明るい声と言葉に、無陀野は人知れず笑みをこぼした。





第92話 嬉喜嬉喜





気持ちを切り替え、話題は再び真面目なものへ。

この後の動きをどうするか、担任の先生から宿題が出された。


『アグリの出現は桃にも予想外の出来事のようだ。まるで統率がとれてない。つまり桃側でトラブルがあったに違いない。

 俺もアグリや隊員の討伐をおこなう。お前らはどう動くのか、自分たちで考えてみろ』


生徒たちからの返事を待たず、無陀野との通信はスパッと終了した。

バトンを受け取るのは、すっかりリーダーっぷりが板についてきた皇后崎である。


「アグリが想定外なら、原因も調査したほうがいい。隊長どもを見つけて吐かせるぞ」

「よし!手分けしようぜ!雷殿!松本詳しいな!?」

「うん!美味しいお菓子のお店はね…」

「気になるが今はそれじゃない!協力しようぜ!

 スズは引き続き救護活動、俺と皇后崎はそれぞれ隊長を捜す!松本に詳しいお前は住民を救ってくれ!」

「うん!ふふふ」

「どうした?」

「なんかこうゆうの"仲間"って感じするね!」

「ばーか、何言ってんだよ。俺らとっくに仲間じゃねぇか。なっ、スズ?」

「うん!雷君がいないとこの作戦は上手くいかない。頼りにしてるんだから!」


2人の言葉を受け、雷殿の表情はパーッと明るくなる。

そのキラキラした笑顔につられ、スズと一ノ瀬もまた微笑み合った。

雷殿はそのまま皇后崎にも確認を取り、渋々ながら肯定の返事をもらったことで喜びが頂点に達した。


「嬉しい嬉しい嬉しいぃぃぃ!」

「あんなに喜んでくれるとこっちも嬉しくなるね!」

「けど飛び跳ねるほどか?」

「ずっと昴と2人で戦ってきたからだろ。雷殿ー!」

「?」

「街は頼んだ!負けんなよ!」

「皆も頑張ってねー!」


そうして雷殿と別れ、続けて一ノ瀬とも違う道を行くスズと皇后崎。

救護のため再び市街地へ向かう彼女を送り届ける役目は、当然ながら同室コンビの間で小競り合いが行われていた。

結果口では勝てない一ノ瀬が折れ、皇后崎は見事想い人と2人になれるチャンスを得ることができたわけだ。

しばらくは今回の事件について意見を交わしていたが、それがひと区切りつくと話題は全く違う方向へ…


「…そういやさ」

「ん?」

「お前、四季と付き合ってんのか?」

「えっ!?ど、どうしたの急に?」

「いや、さっき好きだとか何とか言ってたから…そうなのかなって」

「ち、違うよ!付き合ってない!…告白は、その、してもらったけど…」

「…返事したのか?」

「ううん…自分の気持ちが、まだ整理できてなくて」

「! そっか」


てっきり2人がそういう仲になってしまったのだと思っていた皇后崎は、バレないようにホッと胸をなでおろす。

さっきまでの険しい顔が一転して穏やかになったのを見て、スズは不思議そうに彼を見つめるのだった。

それからまた少し歩き、花時計公園で皇后崎と別れたスズは、自分を待っている人たちの元へと急いだ。



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