生徒たちとの会話を終えた無陀野は、宣言した通り邪魔者の排除へと動こうとしていた。
だがしかし、彼にはその前に1つやっておかねばいけないことがあった。
スマホを取り出し、連絡先一覧からある人物の名を選ぶと躊躇なくタップした。
『何だ?』
「今少しいいか?」
『構わねぇが、お前今松本だろ?ダベってる暇あんのかよ』
「ない。だから手短に済ます。真澄、お前はしばらくスズに接近禁止だ」
『は?』
「任務に必要な最低限のやり取りは許すが、それ以上の言動は許可しない。どうしても会う必要がある場合は俺が必ず同席する」
『待て待て待て!何、勝手に決めてんだよ。ふざけんな』
「ふざけてない。あいつを護るためだ」
『俺がスズに何したってんだよ。危害加えた覚えはねぇぞ?』
段々とイライラが増していく淀川に臆することなく、無陀野は地下でのやり取りをかいつまんで説明した。
刺激の強い話題はスズに悪影響を及ぼす。
実際に淀川とのやり取りの後、動揺して集中力が切れ、ボーッとしている場面があったのだと話を締めくくった。
『(あいつ可愛すぎんだろ…単語出しただけでそんなに動揺してんのかよ)』
「納得したか?」
『話はわかった。百歩譲って、任務に多少なりとも支障が出たことは俺のせいでいい。悪かった。
けどよ…スズの交友関係に口出す資格がお前にあんのか?』
「資格?」
『彼氏でもねぇのに、あいつに近づく男全員審査するつもりかよ?お前にとってスズは、ただの生徒で秘書だろ』
「"ただの"じゃない。大事な存在だ」
『はぁ〜…じゃあその"大事"ってのはどういう意味だよ。同じ鬼としてか?それとも優秀な秘書として?違ぇだろ。
お前は1人の女としてスズが大事なんだよ。だから任務の真っ最中にこんなくだらねぇ電話かけてきてる。
そっち方面が鈍いお前に教えてやるよ。…お前はスズに惚れてる』
「!」
『惚れた女を動揺させた俺に嫉妬したから、任務の手止めて電話してきたんだ』
「俺が、スズに…」
『ガキじゃねぇんだから、自分の気持ちぐらいしっかり管理しろ。ついでだから言っちまうと…俺も、あと恐らく京夜も同じだ』
「京夜も?」
『あいつはそういうの隠すの上手いからな。確証はねぇが、たぶんそうだ。つまり…俺たち3人は同じ女に惚れちまってんだよ』
「…そうか」
『お互い譲る気も、引く気もねぇんだ。正々堂々やろうぜ、無陀野。選ぶのはスズだ』
「そうだな……わかった。さっきの発言は撤回する。フェアにいこう」
『おぅ。じゃあな』
思わぬ形で自分の気持ちを知った無陀野。
スズへ抱いていた"特別な感情"の正体は、初恋にも似た淡い恋心であった。
「(不思議だ。今どうしようもなく…スズに会いたい)」
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無陀野から強い想いを向けられているとは夢にも思わず、スズは治療に専念していた。
そしてそれがひと段落し、最後の救急車を見送ると、ふーっと息を吐きながら伸びをする。
「(だいぶ治療の方は落ち着いてきたかな)」
辺りを見渡しても、あの恐ろしいほどの混乱は感じられない。
羅刹組の頑張りはもちろん、雷殿が加わったことで戦力が格段に上がったが故だ。
さて、次の一手をどうするか。
基本治療以外は不得手なので、スズの仕事はあまりないのが現状だ。
「(迅に相談してみよっかな。近くにいるし!)」
先程別れた花時計公園へ戻って来たスズは、同期の姿を見つけて笑顔になる。
声をかけようと思ったが、皇后崎が発するただならぬ空気に足が止まった。
彼の目線の先には1人の男性が立っていた。
皇后崎と似た目元、同じ髪色、そして何より彼が今まで見たことのないような顔をしていること…
そのすべてから、スズは男性の正体を悟った。
「(あれってもしかして…)迅のお父さん…?」
「正解〜」
「!」
ポロッと漏らした言葉に対する答えが返ってきたことに驚き、背後を振り返るスズ。
そこには唇にピアスをつけたガラの悪い男が立っていた。
to be continued...
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