遊摺部の高円寺での戦死隊員の墓参りに関する話がまとまり、ようやく場の空気は弛緩していった。
と、ここで万が不意に一ノ瀬へ声をかける。
鬼神の子である彼の記憶も見てみたいと伝え、万は再び力を解放した。
しかし数分後、万は吐血しながら咳き込んでしまう。
「大丈夫か!?」
「万さん…!これ使ってください!」
先程とは全く違う反応に、スズはすぐさま傍へ駆け寄りハンカチを差し出す。
お礼を伝える万はツラそうだったが、それでも落ち着いた調子で言葉を紡いだ。
雷殿や一ノ瀬をはじめとする鬼神の子は、代々記憶を共有している可能性があるのだと…
覚えているかどうかは別として、鬼神の子たちは歴代の人物の記憶を持っているというのだ。
「記憶を見る限り、四季君は最近鬼の自覚を持った。スズさんもその場に立ち会ってたよね」
「あ、はい!確かにあの時の四季は何も知らなくて、自分の力に戸惑ってる感じでした…」
「うん、そうだと思う。…不思議じゃないかい?少し前までそんなただの子供だった君が…すぐに桃との戦いに身を投じることができるなんて。
これまでの鬼神の子たちが築いた戦いの記憶…それこそが鬼神の子が持つ"戦いの本能"。
その血を絶やしてはいけないという鬼神の意志があるかのように、"生存本能"が君たち鬼神の子には備えられているのではないか」
自分のことながらあまり興味を示さない一ノ瀬に代わり、花魁坂が話に入ってくる。
今聞いた話は、力を使うと寿命が短くなるという話と矛盾するのではないかと言うのだ。
練馬で一ノ瀬が瀕死の状態から回復した時、確かに花魁坂はその回復力の代償として鬼神の子は短命だと伝えていた。
同じ認識でいたスズもまた、話を聞くべく2人の近くへ移動した。
「え?確かに鬼神の力は過度に使えば悪影響ですが、鬼神の子は並外れた回復力でその負担を補ってるはずですよ?」
「え?でも鬼神の子はその力を使いすぎるせいで早死にする子が多いって…」
「それ誰から聞きました…?」
「聞いたというか定説とされてるはず…だけど」
「僕は色々お婆ちゃんに聞いたことがあるんですが…
確かに若くして亡くなる鬼神の子はいたみたいですが、力を日頃使いすぎてたことが理由というのは聞いたことが…」
万の発言に、一ノ瀬は喜びを露わにする。
鬼神の力をリスクなく使えるのなら、こんなに良いことはないのだから。
スズも同期に関するポジティブな話に、安心した表情を見せる。
「もしお婆ちゃんが知ってたら、雷に力を使わせないし、僕も使わせません」
「それもそうか…雷君は今までもずっと松本の人たちを守ってきたんですもんね」
「うん。さっきの話が本当なら、雷の体に何かしら異変が出てもいいはずですが…」
「とてもそんな感じには見えなかったです」
「一体どういうことなんだ…?」
「情報が交錯して伝わってるかもですね…」
「だとしたら、これ以上は憶測の域を出ないね…」
「お婆ちゃんが何か遺してないか確認してみます」
「うん、お願い」
「私からも、よろしくお願いします…!」
季節外れのカブトムシ片手に外から戻ってきた雷殿を中心に、一ノ瀬たちがワチャワチャしている一方…
スズ・花魁坂・万は真剣な顔でそう言葉を交わした。
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遊摺部の無実証明ミッションは無事に終わり、松本コンビが住み慣れた場所へと戻る時間が迫っていた。
2人を見送るべく、日暮れ間近の船着場に校長を含めた全員が集合した。
それぞれが言葉を交わす中、雷鬼が炎鬼に声をかける。
「ねーねー四季!俺たち仲間だよねー?」
「ん?そうに決まってんだろ?」
「じゃあ困ったことがあったら飛んでくるねー!困った時助けに来るのが仲間だもんね!」
「じゃあ俺も何かあったら駆けつけるぜ。約束だ」
「?」
「違う違う。手をこうして…昴も」
そう言って握りこぶしを作った一ノ瀬は、雷殿と万にコツンと手をぶつける。
"約束"と言い合う3人の表情は、どれもキラキラと輝いていた。
「またねー!」
「元気でなー!」
「気をつけてねー!」
「いなくなると寂しいなー」
「本当だね。急に静かになった感じする」
「わかる!おもしれぇ奴だったもんな」
「また会うのが楽しみだな」
最後まで海の方を見つめていたスズ、一ノ瀬、矢颪。
寂しさは残るものの、いつまでも感傷に浸っている暇はない。
いつか再会するその日まで互いに無事でいることを願い、若人たちは日常へと戻っていく。
to be continued...
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