松本での一件が落ち着いてから数日後、スズたちは今日も今日とて無陀野による特訓中。
以前より質も量も格段にレベルアップした内容に、終わるや否や全員がその場に倒れ込んだ。
屏風ヶ浦や漣とポ●リを飲みながら、スズはふと男子たちの方へ目を向ける。
その中心で皆と楽しそうに話し、明るい笑顔を見せる遊摺部の姿を嬉しそうに見つめるのだった。
第97話 お風呂の王様
汗だくの体をリセットするべく、同期全員が揃ってお風呂へと向かう。
危うく男子側に入って行きそうになる漣を屏風ヶ浦と共に引き剝がして、スズたち3人は女湯へ。
キャッキャッと話しながら体や頭を洗い、待ちに待った温泉の中へ!
肩までつかれば、3人とも自然に"はぁ〜"と気持ち良さそうな声が出た。
「本当このお風呂最高だよね〜」
「はい〜疲れが取れていきます〜」
「ロクロと一緒じゃないのだけが不満だな」
「無人先生に混浴制度導入お願いしてみたら?」
「おっ!それいいな!」
「ダメですよ!2人とも何言ってるんですか…!」
と、壁を挟んだ向こう側が何やら盛り上がっているのが聞こえてくる。
屏風ヶ浦と"元気だね〜"などと話していると、急に漣が風呂から出て壁の方へと向かって行った。
そして何を思ったか、突然破壊する勢いで壁を蹴り出したのだ。
「えっ、ちょ、水鶏!?」
「何してるんですか…?」
「四季ぃ!ロクロにそんなことさせたら、ちん棒ダメになって将来子供作れなくなっちまうだろぉ!」
「く…水鶏ちゃん、壁壊れちゃうよぉ〜」
「何が聞こえたか知らないけど、そのぐらいにして…!」
男湯でなにやらくだらないゲームをしているらしく、漣がそれに反応したようだった。
覗き穴ができては困ると、スズと屏風ヶ浦で彼女をなだめながら、何とか風呂の中へと連れ戻す。
2人で漣に諸々を注意していると、向こう側にまた新たな声が追加された。
「何を遊んでいるんだ?」
「この声は…!無陀…いや、湯気の範囲デカァ!」
「僕もいるよ〜」
「チャラ先!?」
「入浴時間は過ぎてるぞ」
「サーセン!」
「スズたちもそろそろ上がりなね〜!」
「はーい!」
花魁坂の声に返事をし、乙女たちもまた急いで脱衣所へ向かうのだった。
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子供たちが出て行った男湯は、途端に静かになる。
並んで風呂につかる同期コンビの話題は、最近ホットな鬼神の子についてだ。
「ダノッチはどこまで鬼神の子について知ってるの?付き合い長いんだから、何か隠してるのくらいわかるよ」
「…」
「それについては僕から話そうか」
「校長」
「ただし今から話すことは漏洩禁止。他言無用だよ」
そうして校長の口から聞かされた鬼神の子に関する真実に、花魁坂は言葉を失う。
初めて聞く内容だったのはもちろん、今まで自分が思っていたのとは全く違う事実に驚きを隠せなかった。
「あーあ…この数分で常識を覆されたよ。いや…真実を知った…が正解か…桃太郎と話し合う席を持てればいいけど」
「俺たちがやれることは、何が起きてもいいようにあいつらを鍛えてやることだ」
「…そうだね」
「どんな未来でも強く生きられるように…」
「スズ君はどうするの?あの子の力は治癒に全振りなんでしょ?」
「前も言いましたけど、体術に関してはそこらの奴に負けないぐらいに鍛えてます」
「それでもどうしたって危ない瞬間は来る。実際高円寺の時もあったみたいだしね」
「その時は…俺が命を懸けて守ります」
「! ダノッチ…」
「ふふっ、それなら安心だ。いや〜本当に無人君ってスズ君のこと好きだよね」
「…そうですね。好きですよ」
無陀野のストレートな発言に、校長は楽しそうに笑う。
だが花魁坂は、どうしても同期の方に顔を向けられなかった。
湯の中で握られた拳は、相変わらず誰にも気づかれないのだった。
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