月詠たちとのやり取りからさらに数日後。
この日も過酷な訓練を終え、同期たちは夕飯のため食堂に顔を揃えていた。
各々が好きなメニューを選んで席へと座る。
隣にスズが座ったことで、一ノ瀬の機嫌は上々だ。
「スズもA定食にしたんだな!」
「うん!今日はガッツリ食べたい気分だったから」
「俺も!あ〜腹減った〜」
「ふふっ。食べよ食べよ!」
そうして食べ始めてすぐ、食堂のテレビから天気を伝える中継が聞こえてきた。
大して気にせずにいたスズたちだったが、ふと画面から不穏な気配を感じて目を向ける。
そこには暴走状態の鬼が映っており、周りにいた一般人を次々に殺していたのだ。
何が起きているのか理解できず、呆然とテレビを見つめる面々。
するとそこへ派手な髪形をした1人の桃太郎が現れ、鬼を一刀両断する。
そのままその桃太郎は国民へ向けてメッセージを送った。
『国民ども、よく聞け!こいつは鬼だ!こいつらは社会に紛れ、人を襲う化け物だ!今も近くでお前らの命を狙ってる!
だが安心しろ!俺たち桃太郎がいる!桃太郎がただの童話だと思ったか!?違うな!
桃太郎は存在するし、日々鬼と戦っている!俺たちは好き勝手暴れて命を奪う鬼を絶対に許さねぇ!
この世から鬼を一匹残らず必ず排除する!それが俺たち桃太郎機関の使命だ!』
鬼だけでなく、自分たちのことまで大々的に暴露した派手髪の桃太郎。
長年隠し続けてきたことが、この数分で全国に広まってしまった。
子供組の誰もが、顔から血の気が引いていた。
「何だよ…これ…」
「これ…放送されてるん、だよね…?」
「全部バラしやがったぞ!?」
「だ…大丈夫なのかな?」
「僕らこれからどうなるの?」
「うちの旦那になる」
「(いい方に転ぶとは思えねぇ…)」
「どうなってんだよ…」
一気に食欲が失せ、皆が皆静かに食堂を後にする。
最後まで残ったスズと一ノ瀬は、まだ一連の衝撃から回復できないでいた。
「大変なことになっちゃったね…」
「だな……神門ってさ…」
「え?」
「神門って…このことどう思ってんのかな…」
「…確かに」
鬼と桃の共存を目指している彼にとって、今回のことは大いにマイナスだ。
桃太郎機関の中でも異質な考え方を持っている神門の立場は元々良くない。
そこに加えて今回の件…ますます彼に対する風当たりは強くなるだろう。
「最近連絡してる?」
「いや、バタバタしてたし…全然」
「そっか。……神門なら大丈夫!ちゃんと自分で道を切り開ける」
「うん…そうだよな!あいつしっかりしてるし!」
しばらく会えていない友に想いを馳せるスズと一ノ瀬。
異動させられた地で、彼が悲しくツラい事件に直面しているなんて…この時の2人は思いもしなかった。
to be continued...
- 225 -
*前次#
ページ:
第1章 目次へ
第2章 目次へ
第3章 目次へ
第4章 目次へ
第5章 目次へ
第6章 目次へ
第7章 目次へ
短編 目次へ
章選択画面へ
home