冬呉と別れた後も、片っ端から負傷者の治療にあたるスズ。
目に見える範囲はもちろん、遊摺部の指示を受け周辺一帯を移動しながらの救護活動。
一般人と鬼を見極める必要もあるため、心身ともに疲労は溜まっていくのだった。
第101話 鬼救出作戦�B
また1人負傷者を救急車へ引き渡したスズは、ふーっと息を吐きながらある方向へ視線を向ける。
20分ほど前から爆音や煙が絶えず上がり、建物の破壊も凄まじいのだ。
鬼と桃が戦っているのは間違いない。だが普通に暮らしている鬼相手にあそこまでの攻撃は不要である。
つまりほぼ確定で、鬼側はスズの仲間だ。
治療中もずっと気がかりで、ひと段落したら見に行こうと思っていた。
「(行くなら今しかないかも…!)」
次またいつ要請が入るかわからない。
スズは意を決して、現場へとローラースケートを蹴った。
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ビルが立ち並ぶオフィス街の中央に伸びる道幅の広い道路。
スズが到着した時には、さっきまでの騒々しさが嘘のように人の気配がなくなっていた。
少し周辺を歩いてみれば、横転したトラックや熱で溶かされたような檻、そして複数の鬼の遺体も見受けられた。
しかし何よりスズの気を引いたのは、それらの近くにあった大量の血液だった。
「(血の乾き具合からすると、あっちのご遺体よりも新しい…鬼側の血じゃないといいんだけど…)」
一ノ瀬との連絡が途絶えている今、どうしても悪い方へ想像が膨らんでしまう。
マイナスな考えを振り払いながら、スズは報告用に場所と状況を整理する。
そして通信機を使い全体へ声をかけようとしたタイミングで、遊摺部の焦った声が先に入ってきた。
『! …皆止まって!桃が接近してる!』
バラけて動いていた皇后崎・矢颪・漣&手術岾ペアの前に、それぞれ桃太郎が現れたというのだ。
同期たちがつけている通信機が拾う相手の声はどれも若々しく、自分たちと変わらない年齢の人物を想起させる。
しかしその実、声からは自信と鬼への嫌悪がハッキリと伝わってきた。
似た印象を持つ桃太郎を、スズも1人知っている。
「(もしかして冬呉さんの仲間…?)」
そんなことを考えていた矢先、皇后崎の通信機が拾う声から不穏な言葉が聞こえてくる。
"一ノ瀬四季は討伐した"
信じられないと思いつつ、スズは今自分の目の前にある光景と結びつけずにはいられなかった。
連絡が途絶えたのは、トラックでどこかへ連れ去られていたから。
一ノ瀬の性格上、そのままじっとしているはずはなく、何とか檻を破壊して脱出に成功した。
そしてここで…
「(桃と…いや、普通の桃相手なら四季は負けない。きっと…冬呉さんと鉢合わせた。
彼が強いことは、さっき全身から溢れ出るオーラを間近で感じてわかってる。もし聞こえた言葉が本当なら、この血は…四季のだ)」
そう断定する材料は何一つない。他の同期たちと同じように、一ノ瀬の無事を信じたい。
だが目の前に広がる血を見ていると、自分の想像通りのことが起きたとしか思えなかった。
戦闘に入る皇后崎たちの無事を祈りながら、スズは屏風ヶ浦へ通信を繋いだ。
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