「帆稀、聞こえる?」
『はい、聞こえます!』
「四季を捜す手がかりになりそうな場所を見つけたの」
『えっ、本当ですか!?すぐ向かいます!』
「うん!待ってる。今から私の現在地送るね!」
『お願いします!』
『スズさん、ごめん!また救助要請が…』
「おっと〜…わかった!すぐ行く!帆稀、手伝えなくてごめんね…!」
『とんでもないです!スズちゃんも気をつけてください…!』
「ありがとう!」
その場の捜索を屏風ヶ浦に任せ、スズは再び救護活動へと戻っていく。
忙しく動いていた彼女の目が見知った人物の顔を捉えたのは、救護を始めてから10分ほど経った時だった。
周りに人…特に桃太郎がいないことを確認してから、スズはその人物の元へ駆け寄った。
「波久礼先輩!」
「おースズ。お疲れさん」
「お疲れさまです!はぁ〜なんか安心します」
「ん?」
「いや、外回り中は基本1人行動なので、知ってる人に会うとホッとするというか…!」
「ふ〜ん、そういうもんか。…見た感じ、危ない目には遭ってなさそうだな」
「はい、大丈夫です!って、先輩ケガしてません?治します!」
「こんぐらい平気だよ。ほっときゃそのうち…」
そう言いかけた猫咲だったが、スズの不貞腐れた顔を見て言葉に詰まる。
いつもは素直で穏やかなくせに、こと治療に関してはとても頑固な後輩。
自分の命を自分と同じぐらい大事にしてくれる存在は、この戦争状態の中でかけがえのないものだ。
そんなスズの魅力にまんまとやられる自分に苦笑しながら、猫咲は彼女に甘えることにした。
「あー…やっぱ治してもらうかな」
「! はい!」
「でも平気か?鬼と一緒にいるとこ見られたら、そのスクラブの意味なくなんだろ」
「なのでちょっとそこの路地に移動します」
「暗がりに男連れ込むなんて、スズって意外と大胆なんですね〜」
「なっ!ち、違います!そういうつもりじゃないですから!」
「しーっ。でかい声出すと気づかれんぞ」
慌てて口を押さえ、スズはもう片方の手で猫咲の腕を引いて進む。
だいぶ薄暗くなってきた空。となれば路地はさらに闇が濃くなる。
道幅も狭いため、2人の距離は必然的に近づいていた。
普通に考えれば色っぽいことの1つや2つできそうだが、今のスズにそんな発想は微塵もない。
"小さなケガでも、放っておいて悪化したら大変なことになる"
そう熱弁しながら手を動かしている姿に、猫咲は自分の心が癒されていくのを感じた。
だから思っていた以上に治療が早く終わったことに、彼の顔は不満そうだった。
最初は治療なんかいらないと言っていたのに、だ。
「お待たせしました!これで大丈夫です」
「…」
「波久礼先輩…?」
「…もうちょい治療して」
「え、まだどこか痛いとこ「疲れた」
「へ?」
「あちこち走り回って疲れたから治療してください」
路地にある室外機の上に座っていた猫咲は、そう言ってスズの肩に頭を乗せた。
急な甘い展開にドキドキしつつ、スズは治療方法を模索する。
パッと頭に浮かんだのは、高円寺で朽森から元気が出ると言われた方法だった。
心拍数がさらに上がるのを感じながらスズは猫咲の背中に手を回し、もう片方で彼の頭を優しく撫でた。
一瞬ビクッと体が反応した猫咲だったが、すぐに自身も彼女の腰に手を回した。
「ち、治療…できてますか…?」
「できてる。効果抜群です、先生」
「ふふっ。良かったです!」
「(離れたくねぇな…)悪ぃ、あと少しだけ…」
「あ、はい…!」
もし今桃太郎がこの路地に入ってきても、2人を問い質すことはしないだろう。
それぐらい、今の2人の間には甘い空気が流れていた。
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15分後…
すっかり回復した猫咲は、カフェなどが立ち並ぶ一角に来ていた。
建物の上から様子を伺う彼の横には、さっきまで自分を治療してくれていた先生の姿もある。
2人の眼下では、傷だらけの矢颪と顔にバーコードのタトゥーが入った桃太郎が向かい合っていた。
「碇、あんなボロボロに…」
「力の差は歴然だな」
「波久礼先輩…!」
「仕方ねぇな〜じゃあ行きますか」
一旦物影に隠れているようスズに指示をしてから、猫咲はナイフを1本取り出し桃の足元へ放った。
そして殺伐とした空間に、のんびりとした声が響き渡る。
「ど〜も〜割り込んですみません〜。ちょっとここむさ苦しくないですか〜?空気入れ替えましょ〜よ」
「猫咲…!?」
to be continued...
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