翌日。

鬼ヶ島から出ている船に乗り込んだ一ノ瀬達は、無陀野の引率の元、本土へと向かっていた。

訓練もそこそこに突然課外授業へと駆り出され、生徒達は聞きたいことが山ほどある様子。


「先生!桃太郎機関と交戦中の所に僕らが行って大丈夫なんですか?」

「仕方がない。教師を含めて他のクラスも実習でいないし、それに行くといってもお前らは雑務の手伝いだ。戦場には行かない」

「(何!?)」

「はぁ!?戦わないのかよ!?」

「俺ら鬼ごっこの実習もやらず、その上パシリかよ?」


戦場に駆り出されるからには、当然自分達も戦うものだと思っていた一ノ瀬や皇后崎、そして矢颪は納得がいかない。

皆早く戦線に出て、自分の目的を果たしたくてしょうがないのだ。

だがまだまだ未熟な彼らを、無陀野が戦線に出すはずもなく…

"死体を増やすつもりはない"とキッパリと言い切った。

次に生徒達から出てきた疑問は、では自分達は何をするのか?というものだった。


「そもそも鬼機関は全国市区町村にそれぞれ何隊か配属されている。そこで任務をこなすが、主に2つの任務がある。

 1つは"戦闘部隊"…桃太郎が攻めて来た時に前線で戦う。もう1つは"援護部隊"だ」

「スズがいるとこ!」

「そうだ。昨日も少し説明したが、援護部隊はスズのような救護専門の鬼がいるところだ。時には身寄りのない鬼を保護したりもする。

 今回行くのは援護部隊の方だ。それと屏風ヶ浦は学園で休みだ。数日は動けないだろう」

「(強くなれるチャンスなのに納得いかねぇ…それに…あいつがいるかもしんねぇのに…!)」

「お前が捜している桃太郎は京都にはいないぞ」

「え?」

「桃太郎機関も鬼機関同様に管轄がある」

「京都にいる桃太郎はどんな奴なんですか」

「一言で言うと…ヤバい奴」


遊摺部の質問にそう答えると、無陀野は本土の方へと視線を向ける。

その目には、今まさに戦場で踏ん張っているスズや京都支部の面々を心配する気持ちが見え隠れしていた。

そんな彼に、一ノ瀬が昨日からずっと気になっていたことを問いかける。


「先生、何でスズって先に行ったの?やっぱ援護部隊だから?」

「それはもちろんある。こういう状況の場合、援護部隊の力が勝敗を左右することも多いからな。

 だがそれだけじゃない。あいつは生まれも育ちも京都出身で、実家も両親も向こうだ」

「えっ、そうなの!?あ、だから昨日も顔色悪かったのか…心配だもんな」

「こっちにいても落ち着かないだけだからな。それよりはすぐに向かった方が精神的にもいい」

「スズの親、大丈夫だったのかな…」

「昨日、変わらず元気だったと連絡が来てる」

「そっか…!良かった。スズも?」

「大丈夫だ。今朝も連絡が来た。…お前、どうしてそんなにスズを気にかけるんだ?まだ会って間もないだろ」

「だってスズが俺のこと気にかけてくれるから。親父のこともそうだけど、スズってめちゃくちゃ優しいじゃん。傍にいると安心すんだよね」

「だから天使なのか?」

「そっ!鬼の国の天使って感じかな!」


"鬼の国の天使"…その言葉を、無陀野は不思議な程すんなりと受け入れることができた。

それはきっと、彼もまた心のどこかで同じようなことを想っているからだろう。

だがそのことに、本人はまだ気づいていない。

何事に対しても効率とスピードを重視する無陀野だが、こればっかりは時間がかかりそうである。



to be continued...



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