京都に到着した無陀野達一行は、再び電車を乗り継ぎようやく清水五条駅へと辿り着いた。
この辺りは駅名にもあるように、清水寺が近い。
彼らはこれからその清水寺の"地下"へと向かう。
第12話 花魁坂 京夜
お食事処"水元"と書かれた店の中へと入った彼らは、下の階へと導かれる。
そして着物姿の老婆に案内され、畳の下に隠された地下へと続く階段に入って行った。
「すげぇ!京都の地下はこんなになってんのか!」
「周辺のいくつかの店などには、清水寺の地下に続く通路がある。清水寺と鬼は深い繋がりがある。
鬼の先祖の石碑があるくらいだ。アテルイとモレの石碑…まぁ勝手に調べろ」
「へー。なぁスズは?どこにいんの?」
「うるさい。着いたぞ…清水寺のさらに下…ここが…鬼機関の京都支部だ」
そう言って無陀野が引き戸を開ければ、そこには立派なお屋敷が広がっていた。
とても地下にあるとは思えない広さとしっかりした造りに、生徒達は一様に驚きの表情を見せる。
と、そんな彼らの耳に女性の焦ったような声が聞こえてくる。
「先生!こっちお願いします!」
「その後こっちもお願いします!」
「はいはい。カリカリせず悠々といこうよ」
「そんな余裕ありませんよ!少しはスズちゃん見習って下さい!」
「スズは働き過ぎだから、10分でもいいから休憩させて…って、あれ!?ダノッチじゃん!早いね!いつ来たの?LINEしてよー!」
「今着いた。それよりスズは?」
「昨日から寝ずに治療してくれてる」
「寝ずに?」
「そんな怖い顔しないでよ。俺もかなり言ってるんだけど…目の前に患者がいると落ち着かないみたいでさ」
「…どこにいる?」
「隣の和室」
無陀野を"ダノッチ"と呼んだ男…花魁坂は、親しげに彼と小声で会話をする。
相変わらず頑張り過ぎている秘書を心配し、無陀野は和室の方へ足早に向かった。
部屋に入ると、重傷の患者に笑顔を向けながら治療をしているスズの姿があった。
「スズ」
「あ、無人先生!無事に着いたんですね!良かった」
「良くない。ちょっと来い」
「え、先生!?あ、あの…!」
「5分はずす。あとこの血もらうぞ」
「は、はい!」
治療がひと段落したスズに声をかけると、無陀野は彼女の手を引いて歩き出す。
"まだ治療が…"と訴えるスズを完全に無視し、輸血用の血を1つ手に取った彼はさっさと部屋を出て行った。
急に無陀野に話しかけられた看護師は、突然のことに唖然としながら2人を見送るのだった。
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近くの空いた部屋にスズを連れて来た無陀野は、そこにあったイスに彼女を座らせる。
そして慣れた手つきでスズに輸血の処置を施し、自身はそのすぐ傍に腰を下ろした。
終始無言の無陀野に、スズはすっかりビビりモードである。
「無人先生…?」
「…」
「あの…私、その「言ったよな?」
「!」
「お前は誰よりも自分の身を大事にする必要があると。スズが倒れたら、どれだけの鬼が困ると思ってる」
「…ごめんなさい」
「貧血気味だろ。傍にいるから、少し寝ろ」
「でも…」
「はぁ〜…お前はどうしたら休んでくれるんだ?」
「へ?」
「1人の方が寝れるなら出て行く。四季達も来てるから、他に誰か傍にいて欲しいなら呼んでくる」
「先生……じゃあ、膝貸してください」
「は?」
「無人先生の膝で寝たいです!」
輸血で少し元気になってきたのか、スズは明るい笑顔でそう言った。
彼女の突拍子もないお願いに面食らう無陀野だったが、なかなか休もうとしない秘書の頼みとあれば、断るという選択肢はない。
あぐらをかくように片足を折り、もう片方は膝を立てた状態で、無陀野はポンポンと太ももを叩いた。
パっと顔を輝かせたスズはイスから立ち上がると、笑顔のまま無陀野の太ももに頭を乗せる。
「…普通逆だろ」
「ふふっ。いいじゃないですか。前にも言いましたけど…私、無人先生の傍にいると落ち着くんです」
「変わってるな」
「褒め言葉として受け取りますね。あ、先生。5分ですよ」
「あぁ。ちゃんと起こしてやるから、何も考えずとりあえず寝ろ」
「はーい…」
無陀野に頭を撫でられると、スズは気持ち良さそうに目を閉じる。
直後に聞こえてくるスースーという寝息に、無陀野は少し表情を緩めた。
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