無陀野がスズのケアをしていた頃、花魁坂は残された生徒達の相手をしていた。
初めて会う彼らにも、花魁坂は持ち前の気さくな性格でガンガン話しかける。
「嘘!可愛い子いるじゃん!俺、前髪大丈夫!?うわー!ちゃんとVO.5でセットしてぇ!とりあえずLINE教えて!」
「チャラい奴、マジ無理」
「うわーへこ…まなぁい!タイミングって大事だもんね!」
「なんだよこのチャラ男…つーかスズは?まだ会えねぇの?」
「スズは〜…今仕事中だから、もう少し待ってね。…スズと仲いいの?」
「仲いいっていうか…スズは俺にとって天使だから!」
「! 天使か…じゃあ君にとって特別な存在なんだね」
「おう!」
自分の気持ちに正直な一ノ瀬の姿に、花魁坂は悲しげに微笑む。
大人になると、自分の気持ちを素直に伝えるのが難しいこともある。
若い力に羨ましさを覚えながら、花魁坂は彼らとの会話を続けるのだった。
それから数分後…
1つの和室から、無陀野が姿を見せる。
すぐに駆け寄ってきた花魁坂と話すのは、当然彼女のことである。
「どう?」
「輸血しながら5分寝かせた。今はその輸血が終わるまで休ませてる」
「そっか…良かった。ありがとう。…あの男の子がスズに会いたがってるよ」
「四季か。そろそろ会わせないと、余計うるさくなるな」
「天使だって言ってた、スズのこと」
「入学当初からずっと言ってる」
「何か俺すごい納得しちゃった!ダノッチは?」
「……さぁな。行くぞ」
そうして一ノ瀬達の前に戻って来た無陀野は、ようやく花魁坂のことを紹介する。
第一印象でチャラ男と認定された彼だが、肩書はとても立派なものだった。
「こいつは花魁坂京夜。鬼機関京都支部、援護部隊総隊長だ」
「ダノッチとは羅刹学園の同期なのよ!あとちなみに、スズに医学を教えたのは俺だから!」
「えっ、あんたが!?信じらんねぇ…」
「無駄話はいい。俺はこれから前線に出る」
「えーもう行くの?」
「は!?先生、前線に行くのかよ!?連れてけよ!」
「俺はこんな奴の手伝いなんか嫌だぜ!」
「ワンパクキッズの教師とか大変だな!どんまい、ダノッチ!」
「そのワンパクども自由に使ってくれ。じゃあな」
そう言い放ち、ローラースケートで颯爽と駆け出す無陀野。
と、途中にある和室の障子が静かに開く。
反射的に足を止めれば、そこから顔を出していたスズと目が合った。
「輸血終わったか?」
「はい!ありがとうございました」
「これからまだまだ負傷者が運ばれてくる。スズの力は必要不可欠だ。…俺の言いたいこと分かるな?」
「ちゃんと休みながら、皆さんの治療にあたります!」
「それでいい。頼むぞ」
「はい!先生は前線に?」
「あぁ。行ってくる」
「気をつけて。無人先生の治療するの嫌ですからね!」
笑顔でそう言うスズに、無陀野は静かに頷きを返す。
そしてスズの頭にポンと手を置くと、彼は今度こそ支部を出て行くのだった。
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