スズが騒動でケガをした仲間を治療している一方で、一ノ瀬はゾンビ化した仲間を次々に倒していた。
自分が今銃弾を撃ち込んでいる人にも大事な人がいて、誰かにとっての大事な人だったはずなのに…
一度死んだ人をもう一度死に追いやる行為は、一ノ瀬の感情をぐちゃぐちゃにしていた。
そんな中で浮かんでくるのは、自分にとって絶対的な存在である彼女だった。
「(俺らの敵は桃太郎だろ…そうだよな、スズ…)」
第14話 外の道にも限度があるだろう / 悪でいい
その頃京都市内では、無陀野が京都の桃太郎・桃宮唾切と相対していた。
自身の細菌を入れた鬼の死体を使って、無陀野の攻撃を防ぐ唾切。
そのやり方に、無陀野は表情を曇らせる。
「悲しそうな顔してどうしたんだい?蛆が減って喜ばしいだろ?」
「外の道にも限度があるだろう」
「それを外道以下が言うなんて、面白過ぎてつまらないね」
「無陀野さん!自分らも加勢します!」
「いや、お前らは至急アジトに戻れ。向こうが気になる。着いたらまずスズに接触しろ。あいつならきっと現状を正確に把握してる」
「(スズ…?それってもしかして…)そーはさせないよー。蓬くーん」
「うっす」
唾切に名前を呼ばれた副隊長の桃草蓬は、自分の能力で無陀野たちを囲むように大きな部屋を造り出した。
閉じ込められた無陀野が"何のつもりだ?"と問いかければ、唾切はさも当然というように答える。
"閉じ込めている間に、鬼のアジトへ向かう"と…
「どーゆうことだ?」
「場所なんか知らないくせにって思ったでしょ?くっくっく…放置した死体に発信機をつけておいたんだよ」
「!?」
「そしたら面白い所にバンバン発信機の信号が集まったんだよ……清水寺の下にね」
「何…?」
「ふふふ。じゃあゆっくり行かせてもらうよ。…あ、そうだ。1つ聞きたいことがあったんだ」
「?」
「無陀野君さー…秘書がいるよね?」
「! …そんなのはいない」
「とぼけてもダメだよ。珍しい能力を持ってるって噂も入って来てるんだから。
でもガードが固くてさ、顔も名前も能力も…詳しいことは何一つ分かってないんだ。
せめてどれか1つだけでも分かればなーって思ってたら、さっき名前出たよね?…スズ、だっけ」
「その汚い口であいつの名を呼ぶな」
「ふふっ。大事にしてるよねー。すごく守られてる。だからその子も探してこようと思って。てことで、今度こそ行くよ」
「待て!」
「君も生きてたら見においでよ」
「アグリ、入室を許可する」
蓬の指示で、猿・雉・犬が合体したアグリと呼ばれる気持ち悪い生物が部屋の中へと入って来る。
そうかと思えば、その生物はビリビリと嫌な音を立てて膨れ始めた。
いち早く異変に気づいた無陀野が注意を促すも、次の瞬間…!
「爆発に美しさが足りなかったかな。要改良」
「スズ…逃げろ…」
爆発に巻き込まれ、薄れてゆく意識の中で、無陀野は大切にしている秘書の名を呼ぶのだった。
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