和室に散らばる仲間たちの遺体。
スズによる記録が終わり、遺体はどれもキレイに整えられていた。
だがこのままここへ放置しておくわけにはいかない。
総隊長である花魁坂は、皆に次なる指示を出した。
第15話 美人は手強い 〜 無理無理無理
「仲間たちの遺体を処理してやらないとな。四季君は芽衣ちゃんを頼むよ。皇后崎君、遺体を運ぶ場所案内するから一緒に行こう。スズも準備いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「ありがと。他の人は遺体を一か所に集めておいてちょうだい」
援護部隊全体にそう言うと、花魁坂はスズと皇后崎を連れて和室を後にした。
3人が向かう先は、遺体を処理する火葬場だ。
「君らが通った通路の途中に火葬場があるのよ。つーか彼女とかいんの?」
「…」
「京夜先生、それセクハラですよ」
「え、嘘!ダメなの!?」
そんな何気ない会話をしながら歩くこと数分、3人は1つの扉の前に到着する。
そこで花魁坂から遺体処理のやり方を聞き、スズたちは今一度和室へ戻ろうとしていた。
真ん中に立ったスズが書類の最終チェックをしている中、花魁坂はふと自分の左側から嫌な気配を感じ取る。
バッと振り返った瞬間、彼の脇腹にはナイフが突き刺さっていた。
無表情でナイフを振るったのは、先刻まで無陀野と相対していた唾切だった。
「!?」
「あーこっち向くからズレたじゃん」
「京夜先生!!」
「(そこそこ場数を踏んでるからわかる…こいつはヤバい…!だから瞬間的に殺すべきだ…!)」
痛みで体勢を崩す花魁坂を支えるスズと、すぐさま血触解放をし攻撃態勢に入る皇后崎。
だがそんな彼の背後にも、別の桃太郎が迫る。
副隊長の蓬が、自身の能力で皇后崎の頭を箱で囲おうとしていたのだ。
彼の反対側にいた花魁坂が瞬時に片手でスズを抱き寄せながら、もう片方で皇后崎の手を引く。
頭への攻撃は間一髪避けられたものの、皇后崎はそのまま右腕を箱で覆われてしまう。
そして次の瞬間…ボキョっという嫌な音を立てて彼の腕はあり得ない方向に曲がった。
「ぐっ…!」
「ち!ズレた…」
「皇后崎君!」
「心配いらねぇよ!少ししたら治る!」
「待って!すぐ治すから!」
「! スズ、血使っちゃダメ!!」
「(! へぇ〜この子がスズか。随分早く見つかったな〜)」
皇后崎の折れた腕を治そうと、スズが自分の血を使い始めた途端、それを花魁坂が全力で止めた。
彼女の能力は特殊が故、なるべく桃太郎の前では使わせないようにと鬼機関全体に周知されている。
スズ自身も当然このことは知っていたが、咄嗟のことで思わず動いてしまったのだ。
更に悪いことに、今彼らの目の前にいるのはスズについて知りたがっている唾切…これ以上の情報漏洩は避けたいのが花魁坂の思いだった。
「君…無陀野君の秘書やってる子だよね?」
「えっ…!」
「手出さないからさ、そのまま血使ってみてよ」
「あ、いや、それは…「皇后崎君」
「!」
「スズ連れて、隊員や四季君たちに唾切が来たと伝えてきてくれない?患者含め全員逃げるように先導してちょうだいな」
「京夜先生…!」「……あんたは…?」
「…まぁなんとかなるっしょ。スズのこと頼んだよ」
「…分かった。応援も呼んでくる」
「ダメです!京夜先生だけ残すなんて…!」
「大丈夫だから、そんな泣きそうな顔しないの。また後でね」
不安でいっぱいの顔を自分に向けるスズに、花魁坂は穏やかな笑みを見せながらその頭を撫でる。
それでもまだ残ろうとする彼女の手を引き、皇后崎はもの凄いスピードで来た道を戻って行った。
「2人とも優しいねー」
「あーぁ。君のせいで彼女の能力見れなかったじゃん。…まぁいいや、また後にしよう。蓬くーん」
「うっす」
「(なんだこれは…?細菌で壁を造ってる…?あいつらも内側にいるってことは…逃げ場を潰されたってことか…)」
「清水寺地下はほぼ囲ったっす。文字通り、袋の鼠っすね」
「本当…美女って手強いよね…」
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