花魁坂を残し、来た道を戻るスズと皇后崎。
しばらく走り続け、桃が後を追って来ないことを確認すると、皇后崎は一旦足を止めた。
それは花魁坂のことが気にかかり、後ろを振り返りながら走っているスズのスピードが遅いためだった。
「おい、走ることに集中しろ!」
「分かってる…でも、先生が心配で…」
「俺らが遅くなればなる程、あいつの危険度も上がる。あいつのことが心配なら、今はひたすら走れ」
「そう、だよね…皇后崎君の言う通りだ。ごめん、集中する」
「行くぞ」
「待って!その前に腕治すから」
落ち着いた表情になったスズは、そう言うと血を解放し腕の治療を始める。
何度見ても不思議な能力だと思いながら、皇后崎は先程の花魁坂の発言について尋ねた。
「さっき何であいつはお前の治療を止めたんだ?」
「…私、桃太郎の前では極力血を使うなって言われてるの」
「何でだよ」
「能力がバレたら桃に狙われるから」
「!」
「すぐに治してあげられなくてごめんね。…よし、OK!違和感とかある?」
「…いや、ない」
「じゃあ行こう!」
そう言って少し笑みを向けると、スズは前を走り出す。
その背中を追いかけながら、"あの治癒能力が何故桃に狙われるのか…"と、皇后崎は不思議に思うのだった。
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数分後、スズと皇后崎は和室へと到着した。
だが2人がまず感じたのは、室内に漂う謎の違和感だった。
「おい!ここに桃太郎が…」
「ん?何か変じゃない?」
「あぁ、人の気配が薄い…お前は少し下がってろ」
「あ、うん…!」
「おい」
「「!」」
「…なんだよ、お前かよ。あれ、スズは?」
「俺の後ろにいるだろ」
「四季…!皆も、無事で良かった…!」
「スズ!大丈夫か?ケガしてねぇか?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
「これだけか?どーゆうことだ?」
「実は…」
そうして聞かされたのは、スズたちが出て行った後の出来事だった。
遊摺部の能力で桃太郎が近づいてきているのを察知し、患者を地上へと逃がしたこと。
だがその途中、黒い靄で道を塞がれてしまったこと。
結果、一ノ瀬たちを含めた一部の隊員が逃げ遅れてしまったこと…
「黒い靄って、あの女性の桃太郎の能力かな…?」
「たぶんな。遊摺部は?」
「あいつは立ってた場所がよかったから地上に逃げられたよ」
「手分けして出られる所探すしか…」
「ないよ。さっき外に繋がる所は全部見たけど、黒い奴で塞がれてる。逃げ場はないよ」
「なぁ、あのチャラ先どーした?」
「あいつは…!」
皇后崎が話し始めようとした時、突然室内に気味の悪い生物が入って来た。
それは先刻無陀野の前にも現れた、犬・猿・雉が合わさったアグリと呼ばれるものだった。
アグリは目の前にいた隊員をいとも簡単に食いちぎると、むしゃむしゃと食べ始める。
その光景に他の隊員たちはパニックになり、三々五々辺りに散って行った。
「くそ!バラけちまったぞ!」
「俺らもいったんバラけるぞ!固まってたら一網打尽にされる!」
「(あの医者…どーなったんだ…?…ん?そういやあいつは?)」
皇后崎が気にするもう1人の人物。
自分では攻撃も防御もできない、にもかかわらず桃太郎に狙われる能力を持った危なっかしい人物。
「(京夜先生、待っててください…!)」
スズは皆が散り散りになったタイミングで、再び火葬場へと続く道に向かった。
to be continued...
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