任務が無事に完了したスズと無陀野は、学園に帰るべく支度を整える。
出入口まで見送りに来ていた偵察部隊コンビと最後に挨拶を交わし、いよいよ出発というところで、不意に淀川がスズの頭に片手を乗せた。
「なぁ、無陀野」
「?」
「こいつここに置いてけよ」
「! 真澄さん?」
「ネックレスは渡したが、それより俺が傍にいる方が安全だろ。体術や歴史なんかは俺らでも教えられる」
「はぁ〜…学園に入学させる理由の1つは仲間を作ることだ。こいつの仲間になるような同期がここにいるのか?」
「まぁ当然そうくるよな。安心しろ、冗談だよ。…スズ、またいつでも来い。相手してやるよ」
「はい!」
「何か困ったことがあったら、すぐ連絡してね。僕も真澄隊長も喜んで力になるから」
「ありがとうございます!お二人もケガしないようにしてくださいね…!」
笑顔でそう言うスズに、淀川は軽く手を上げて応え、並木度は同じように笑みを見せながらヒラヒラと手を振った。
------
----
--
練馬からの帰り道、無陀野は横を歩くスズに静かに声をかける。
話題は先程の淀川の発言についてだった。
「残りたかったか?」
「! …真澄さんも馨さんもすごくいい人で、この短時間でめちゃくちゃ好きになりました」
「そうか」
「はい。…でも私、無人先生の傍にいると落ち着くんです」
「!」
「だから体術も、秘書としての仕事も、何かいろいろ吸収できるというか。他にも教えて欲しいことたくさんあるし…だからまだ傍に置いといて下さい!」
「言われなくてもそのつもりだ」
「はい!」
無陀野の傍が落ち着くと言う人間は、こと鬼の世界ではごくごく少数だろう。
彼自身も言われ慣れていないのか、滅多に変わらない表情に変化が出るほど…
そんな折、足取りも軽く前を行くスズがクルッと後ろを振り返る。
「先生!」
「何だ」
「私の同期ってどのぐらい来ますか?10人ぐらい?」
「そんなに来た年は今まで一度もない」
「えっ…」
「下手したらお前だけの可能性だってある。実際ここ数年は0だった」
「えーっ!だって先生さっき、仲間を作ることが目的だって言ってたじゃないですか!」
「合格する奴がいなければ仕方ないだろ。そのために、今お前をいろんな奴に会わせてるんだ。同期に限らず、知り合いは多いに越したことはないからな」
「そっかぁ…たくさん来るかな〜」
「そんなことを考えるのは時間の無駄だ。帰ったら体術やるぞ」
「は〜い」
------
----
--
そんなこんなで月日は流れ、来週には学園の入学式…というある日のこと。
この日も無陀野の打ち合わせに付き添い、秘書としてテキパキと動いていたスズ。
ふ〜と大きく息を吐きながら休憩していると、部屋に入って来た無陀野が小さな巾着袋を彼女の前に置いた。
「ん?何ですか、これ?」
「入学祝いだ」
「えっ!開けていいですか?」
「あぁ」
思いがけないプレゼントに目をキラキラさせながら袋を開けたスズは、出てきたものを見てまた喜びを露わにする。
袋の中には1つの指輪が入っていた。
だがそれはただの指輪ではなく、中に小さな刃が仕込まれた特殊なものだった。
「これって…!先生が付けてるやつですか!?」
「そうだ。お前いつも血を使う時に誰かに刃物を借りてるだろ。これからはそういう機会の方が少ない。自分でちゃんと管理できるようにしておけ」
「はい!ありがとうございます…!大事にします」
「サイズが合わなければ、今から店に行くが…」
「いえ、大丈夫です。ピッタリでした!」
右手の人差し指に指輪をつけ、満開の笑顔でそれを見せてくるスズに、無陀野も表情を緩める。
この1週間後…
十数年に一度の粒揃いな同期と共に、スズは学園生活をスタートする。
第1章 fin.
- 47 -
*前次#
ページ:
第1章 目次へ
第2章 目次へ
第3章 目次へ
第4章 目次へ
第5章 目次へ
第6章 目次へ
短編 目次へ
章選択画面へ
home