京都から戻った翌日。
昨日まで命懸けのやり取りをしていたとは思えない程、8人の生徒達はごく普通に無陀野の授業を受けていた。
本日のテーマは、卒業後に属する各部隊について。
既に知っている内容とは言え、スズはしっかりと無陀野の話に耳を傾けていた。
第19話 部屋決め
「鬼機関は大きく分けて戦闘部隊、偵察部隊、医療部隊となっている。
細かくもっとあるが、大体このどこかに卒業後は入隊する。自分の血の特性に合った隊に入るのが…」
「ウ"ウ"ウウ"…」
「ちょっと四季…!大丈夫?先生、こっち見てるよ…!」
「ウ"ウ"ウ"…!」
通路を挟んで一ノ瀬の隣に座るスズは、先程から変な唸り声を発している同期に声をかける。
ほとんど高校に行っていなかった彼にとって、一定時間イスに座り授業を受けることは苦痛でしかない。
寝そうになっては必死に目を開け、そして唸り声をあげる…
何か言葉を発しているわけではないのに、その存在はうるさいことこの上ない。
そして彼の隣にもまた、違った騒音を発する者がいた。
腕を組み、大きな口を開けたままガーガーとイビキをかく矢颪のことも、スズはさっきからずっと気になっているのだ。
担任の雷が落ちないよう、小さく声をかけようかと思っていた矢先…
スズは不機嫌そうにこちらに向かって来ていた無陀野と目が合う。
彼女の行動を制するように手を向けた無陀野は、寝ている矢颪の眼前で指を鳴らした。
最強と言われる無陀野の指パッチン…ただで済むわけはない。
「ぐおぉぉぉ…」
「やる気ないなら帰っていいぞ。あと四季、お前もうるさい」
「ウ"ウ"ウ"…」
「あ、チャイム」
「今日の授業はここまでだな」
普通の学校と同じく、この羅刹学園にも授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
無陀野は一言呟くと再び教壇へと戻り、次の指示を出した。
「HRではお前らで寮の部屋決めをしてもらう」
「部屋決め?」
「全寮制だからな、2人部屋だ。パパッとペア作れ」
「何それ!修学旅行みてぇ!おもろ!」
「人と生活とか勘弁しろよ!」
「じゃあ俺、スズと一緒がいい!」
「えっ!?」
「夜まで喋って、朝はスズに起こしてもらってさ!あと隠れてお菓子食ったりとか、寝起きドッキリしたりとか…絶対楽しいじゃん!」
「あはは!確かにそれは楽しそうだけど…」
「ダメだ。スズの部屋はもう決まってる」
「えーっ!?何で!誰とどこの部屋!?」
東京に来てからの1年間を、羅刹学園の寮で過ごしていたスズ。
そして彼女の血の特性上、割り当てられたAー1号室は救護室としても使われていた。
ケガ人が出れば部屋の半分を病室として使い、昼夜スズが治療を行いながら見守るというわけ。
故にスズは1人部屋であって、1人部屋ではないのだ。
「なるほど…ってことはさ!ケガすればスズのとこ行けるってことだよな!」
「コラ!冗談でもそういうこと言わないの」
「は〜い…」
「でもそうなると…先生!1人余りますけど!」
「余った1人は"俺と同室"だ」
担任からのこの一言に、一部の生徒たちは愕然とする。
ただでさえ1人部屋がいいと思っている彼らにとって、あの無陀野と同室になることは最早拷問でしかなかった。
「おぉお!俺は死んでも嫌だぞ!」
「てめぇバカなんだから、むしろ行っとけ!」
「(先生と同室なら、いざって時に救助してくれそう)」
「…」
「(私に発言権はない…)」
「(2人部屋…夜の一人遊びが出来ない…)」
「(皆、そんなに先生と一緒の部屋嫌なんだ…)」
「いや、うちはこいつと一緒だから」
漣のその爆弾発言に、一ノ瀬と遊摺部がいち早く反応を示す。
この短期間でまさかカップルが出来上がっていたとは…と、スズもニヤニヤを隠せなかった。
だが漣の申し出は、"男女は分かれてもらう"という無陀野の一声で却下される。
漣が無陀野に食い下がり、一ノ瀬と遊摺部が手術岾に謎のイライラをぶつけている中で、今まで静かにしていた矢颪が急に騒ぎ出した。
「男と女が同じ部屋で暮らしていいわけねぇだろ!」
「(こいつがまともなこと言うんだ…)」
「そーゆうのは20歳超えてからやんのが常識だ。糞馬鹿どもが!」
「汚い言葉で常識語ってる」
「碇君って硬派なんだね。そういうとこしっかりしてるのは良いと思う!」
「当たりめぇだろ!スズも変な男に引っかかんなよ」
「ふふっ。分かった」
スズに褒められ嬉しそうにしてる矢颪を、不満そうな表情で見つめる一ノ瀬。
それからも各々が好き勝手な意見をぶつけ、部屋決めは一向に進む気配がなかった。
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