教室内がいつになくガヤガヤしている中、スズはそっと席を立つと静かに無陀野の元へと歩み寄る。

教卓に手をつき呆れたように生徒たちを見つめていた無陀野は、近づいて来た教え子に気づくと、体をそちらへ向けた。


「先生…」

「ん?どうした」

「私、部屋変わりましょうか?皆、1人部屋がいいみたいだし…」

「確かにお前は1人部屋だが、そうじゃない時の方が多いだろ。いつ誰がどんな状態で運ばれてくるか分からない。

 運ばれてきたら、昼夜を問わず治療に当たる。そんな中で生活するのは、あいつらにとっての2人部屋より余程しんどいはずだ」

「それは全然…!私の使命だと思ってますから大丈夫です!」

「ふっ。お前ならそう言うと思った。でもだからこそ俺は、スズには1人になる時間が必要だと思ってる。

 何も考えずボーっとしたり、好きなことを好きなだけしたり…そういう時間をな」

「そういうものですか?」

「あぁ、そういうものだ。だから部屋のことは気にするな」

「…」

「…1人の時間は嫌いか?」

「! いえ、嫌いではないです。でもあんまり多いと寂しくなりそうだな〜と思って」


そう言って少し眉を下げるスズに、無陀野は温かい視線を向ける。

そしてポンと彼女の頭に手を置くと、他の生徒たちに聞こえないよう小さな声で話しかけた。


「寂しくなったらいつでも呼べ。いくらでも相手になる」

「本当ですか…?面倒だから電話出ないとかないですか?」

「今まで俺がそんなのしたことあるか?」

「ふふっ、ないです!ありがとうございます!すぐ呼んじゃうかもですよ?」

「構わない。お前といる時間は好きだからな」

「えっ…!」


不意にかけられた言葉に、スズは一気に顔が熱くなる。

だがやはり当の本人は無自覚のようで、動揺するスズを不思議そうに見つめていた。

と、そんな2人の様子に気がつく男が1人…


「つーかムダ先、スズと何喋ってんだよ!2人でずりーぞ!!」

「うるさい。お前ら、部屋割りは決まったのか?」

「うっ…まだ、だけど…」

「無駄にダラつくな。ジャンケンでさっさと決めろ。女子はペア、男どもはあと2分で決めろ」


赤い顔を冷ましながら屏風ヶ浦の隣に移動したスズは、男子の部屋決めジャンケンを見守る。

一気に片がつくグっチョッパーを行った結果、何とか各自の部屋が決定した。


Aー1号室:木下スズ(救護室兼)

Aー2号室:屏風ヶ浦帆稀、漣水鶏

Bー1号室:無陀野無人、遊摺部従児

Bー2号室:一ノ瀬四季、皇后崎迅

Bー3号室:手術岾ロクロ、矢颪碇


羅刹学園の寮は2階建てになっており、女子がいるA棟が2階、男子のB棟は1階という配置になっている。

数字が同じ部屋同士が縦に並んでいるため、窓を開ければ上下階でのやり取りも可能だ。


「よっしゃ!じゃあ部屋行ったら早速窓開けて呼ぶからさ、スズも顔出してな!」

「あはは!OK〜!」


そうして楽しそうに会話をするスズと一ノ瀬。

だが敵対する桃太郎機関では、早くも2人のことが話題に上がっていた。


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「唾切隊長が死んだって話、本当なんだな」

「あぁ、総隊会議で話に出たらしい」

「やっぱり鬼神の子はやべぇな…」

「本腰入れて一ノ瀬四季及び鬼神の子の殲滅に当たるって」

「あともう1人、木下スズっていう鬼のことも話題に出たんだと」

「そいつも鬼神の子とか?」

「いや、戦闘能力はないらしい。何でも桃太郎にとって有益な力を持ってるから、見つけたら生け捕りして報告だってさ」


2人を狙う桃の包囲網が、すぐそこまで迫ってきていた。



to be continued...



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