唾切戦から2週間程経ったある日のHRにて…

無陀野は教室に入るなり、持って来た紙袋の中からカツラを取り出して机の上に並べだす。

担任の謎の行動に、生徒たちは興味津々で机の周りに集まって来た。





第20話 神の門で神門





いち早く疑問をぶつけようとしている一ノ瀬を抑え込むため、無陀野はすぐさま説明を始める。

20以上あるカツラを前にして彼が話し始めたのは、来週に控えた部隊見学のことだった。


「来週、東京で働く各部隊を見学することが決まった。だが京都での一件で顔と名前が割れ、そのままウロつくのは危険だ。

 よって、ここにいる全員に変装してもらう。もちろん名前も偽名だ。分かったら、さっさとカツラを選べ」

「うわ!すげー数ある!矢颪、これ似合うんじゃね?」

「はっ!?んなダセーの被れっかよ!バカか!」

「ロクロはこれがいいんじゃないか?」

「え、そう、かな…」

「けっ。ここでもリア充かよ」

「(私は残り物…)」

「(どーでもいい)」


一部静かな者もいるが、ワイワイと会話をしながらカツラを選ぶ面々。

スズもカツラを選びながら、静かに無陀野の隣に移動する。


「これから外に出る時は絶対変装しないとですか?」

「いや、そこまでは考えていない。今回は京都からまだ日が浅いからな。念のためだ」

「なるほど、了解です!…あ、先生も変装するんですよね?私が選んでもいいですか?」

「あぁ」

「ん〜どうしようかな〜」

「そんなに悩むことか?どれでもいいだろ」

「せっかくならカッコいいのを…って思ってるんですけど、先生顔が整ってるからどれも似合いそうで。迷います…」

「俺のより、自分の方をしっかり選べ。木下スズだとバレないようにするんだぞ」

「はい…!」


無陀野の言葉に、スズはピッと背筋が伸びる。

攻撃も防御もできない自分が、ありのままで東京に放置されれば、まず間違いなく桃が接近する。

この中で一番変装する必要があるのは、スズ自身なのだ。

なるべく今の自分から遠いイメージのカツラを選び、合わせて無陀野のものも選び終えると、そのタイミングを見計らって一ノ瀬が声をかけてくる。


「スズー!このカツラどう!?」

「ん〜?あ、いいじゃん!普段と全然違うし、似合ってる!」

「へへっ!じゃあこれにしよ〜っと!」

「帆稀は?もう選んだ?」

「わ、私は…残ってるもので…」

「そんなこと言わずに〜!ん〜普段が肩ぐらいだから、思い切ってショートとかどう?これとか!」

「……どう、でしょう?」

「うん!イメージ変わるね〜可愛い!」

「あ、ありがとうございます…!」

「いえいえ!水鶏〜ロクロ君のはその辺にして、自分の選びなよ〜」

「あ?私のは別にどーでもいいんだよ。スズが勝手に選んどいて!」

「もう〜!皇后崎君は?決めた?」

「何でもいい」

「じゃあ2人分、まとめて選んじゃうからね!」


無陀野の機嫌が段々と悪くなっているのを感じ、スズはテキパキと漣・皇后崎ペアのカツラを選んでいく。

こうして何とか全員がカツラを選び終えると、当日までに偽名を決めておくよう指示を出してから無陀野は教室を出て行った。


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「いきなり偽名って言われてもな〜思いつかねぇよ」

「自分の名前を少し変える感じで考えてみたら?"四季"だったら、春夏秋冬から選ぶとか」

「なるほど!じゃあ〜ナツ!」

「ふふっ。いいね!合ってると思う」

「で、スズはハルな!」

「へ?何で?」

「俺のと続けて読んだら"ハル・ナツ"になるから!」


何とも無邪気な笑顔でそう言う一ノ瀬に、スズも思わず笑ってしまう。

特に拒否する理由もなく、むしろ明るいイメージのその名前をスズは喜んで受け入れた。



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