天使との祭りデートにテンション爆上がりの一ノ瀬は、スズの手を握り締めながら公園内へ足を進める。
1歩中に入れば、そこには提灯の光に照らされた楽しそうな人々の姿があり、道の両脇にはたくさんの出店が並んでいた。
途中で買ったリンゴ飴やチョコバナナを頬張っている間も、一ノ瀬は絶対に手を離そうとしなかった。
「美味しいね!」
「なっ!こういうの久しぶりに食べたわ」
「私も!……ん?どうしたの?」
「いや、スズ…じゃなくて、ハルが楽しそうで良かった〜と思って!」
「! …誘ってくれてありがとね」
「お礼言うのは俺の方。一緒に来てくれてマジで嬉しい!ありがとな!」
そう言ってお互いに笑顔を向ける2人は、傍から見れば普通の高校生カップルにしか思えないだろう。
そんな楽しそうな2人の耳に、ふと聞こえてくる子供の声。
どうやら射的の景品が取れず、泣いているようだった。
「取れないー!」
「! 射的か〜」
「ナツ、得意そうだよね!」
「まぁな!」
「お姉ちゃん、取れないー。1番の景品小さすぎるよ!」
「…出番じゃない?」
「だな!……ちびっこ姉弟、俺が取ってやるよ」
「お兄ちゃんできるの?」
「ふふ…無理だぜ、兄ちゃん」
「誰よ」
「俺は店長ののぶ男、人呼んで太郎…まぁシェリーって呼んでくれ」
「薬やってんのか?」
「ぶふっ!ちょっとナツ…!」
「だって意味分かんねぇこと言ってから。あ、ハル。一瞬手離すから、俺の服掴んでてな?」
「うん、分かった!」
笑顔で返事をしたスズが自分の制服の裾を掴むのを確認すると、一ノ瀬は慣れた手つきで射的用の銃を構える。
そして少年が小さいと嘆いていた1番の的に狙いを定め、銃の引金を引いたのだが…
「あれ?今…」
「弾…2つだったよな?」
「うん」
「「え?」」
同時に聞こえた2つの声…1つは当然一ノ瀬のものだ。
だがもう1つはスズではなく、一ノ瀬の左側で銃を構えていた長髪の男性から発せられたものだった。
いつの間にか立っていたその男性に驚くスズを他所に、男2人はすぐさま銃を構え直し、次々に的を射抜いていく。
スズや姉弟はもちろん、店長までもが驚く中、2人はついに店の景品をフルコンボしてしまった。
大量の景品を両手に抱えた2人は、先程の姉弟にその全てをプレゼントした。
「この玩具たちは、君たちの所へ行きたがってるみたいだ」
「いいの!?」
「大事にしてくれるかい?」
「うん!ありがと!」
「俺もやるよ」
「えーあっちのがいいのあるー」
「んだと!?」
「でもありがと!」
「2人とも、すごい上手だったね!まさか全部当てちゃうなんて」
「ありがとう」
「ししっ!あ、これはハルにあげる!」
「うわっ、可愛い!ありがとう!」
獏のぬいぐるみを一ノ瀬から手渡されたスズは、嬉しそうにそれを受け取った。
そして思いがけず出会った、自分と同じぐらい銃の扱いが上手い長髪の青年を入れた3人は、公園の外れにあるベンチに腰を下ろした。
見知らぬ青年ということで怪しい存在だったが、子供たちとのやり取りから危険性はないだろうと、スズと一ノ瀬の意見は一致したのだ。
ベンチに座るなりラムネを2本差し出すと、青年は穏やかに声をかけてくる。
「どうぞ。おかげでいいプレイができた」
「サンキュ!」「私まで…!ありがとう!」
「どういたしまして。彼女と一緒にお祭りデートなんて羨ましいな」
「あ、いや、そういうんじゃ「だろ?めちゃくちゃ楽しかったんだ〜!」
"なっ!"とこちらに満開の笑顔を向けてくる一ノ瀬に、スズは何も言えず照れ臭そうに笑顔を返した。
それから銃という共通の趣味で盛り上がり楽しそうに話す男2人を、スズは優しい笑顔で見守っていた。
「めっちゃ話合うじゃん…えーっと…」
「あぁ、つい名乗るの忘れてた。僕は神門…神の門で神門。君は?」
「俺は四…あー…ナツ!」
「ナツは8月生まれかい?」
「いや、2月」
「はは!両親は独特な感性を持ってるね!そちらの彼女さんは?」
「あ、ハルです!よろしく!」
「こちらこそ。ナツとハルか…運命みたいな2人だね!」
「そうなんだよ!つーか、呼び捨てでいい?多分タメくらいっしょ?」
「うん、僕は19歳だよ」
「マジかよ、年上かよ!」「あ、そうなんだ…!」
「大きく括れば同じ未成年だ」
「器デカいな!じゃああれか、大学生とか?」
「ううん、お巡りさんやってる」
「デコスケ!?マジかよ。苦手だわ、お巡り」
「得意な人もなかなかいないよね」
「でも神門みたいな警察官ならいて欲しいかも!」
「ふふっ。ありがとう!」
「なぁ、なんで警官なんかなったんだ?」
「んー悪人から市民を守りたい…的なやつかな」
そうして神門は自身の信念について語り始める。
パっと見だけでは、その人の良し悪しは判断できない。
その人が悪かどうか、しっかりと自分の目で見て決めたいと…
ただ上司が真逆のタイプで、価値観の違いで苦労していると、話を締めくくった。
「まぁでも神門は神門なんじゃね?上司関係なくさ。誰かに言われて曲げるのとかもったいねぇじゃん。むしろ俺は神門の考えに1票!」
「私も!人と真剣に向き合おうとする神門の考え方…私はすごく好き。出来てない人の方が圧倒的に多いけど、神門なら絶対できる。だから貫いて欲しい」
「はは!そっか…!凄いね、ナツもハルも。人の素晴らしさに年齢関係ないのがよくわかるよ」
「やめろよ、恥ずいな」「褒められちゃった…!」
「おっと、もう行かないと怒られちゃう。せっかくだし、ライン教えてくれないかい?今度ゆっくりでかけよう」
「あーいいけど、俺らこっちに住んでねぇんだよね」
「そうなんだ、どこなの?」
「んー…上の方…?」
「(誤魔化し方ヘタクソか…!)」
「ははは!本当に面白いな」
「…あ!明日の夕方くらいなら空いてるわ」
「じゃあどこか行こうか」
「OK!」
「よし!登録完了!ハルのも…と思ったけど、女性の連絡先聞くのはマズいか」
「おう、ハルのはダメ!連絡取りたい時は、俺経由な。でも明日はハルも行くだろ?」
「ううん、やめとくよ。こんなに趣味が合う2人の間に女が入るのは野暮だと思う。男同士楽しんでおいで?」
明るい笑顔でそう言ったスズに、男2人は面食らったような表情になる。
そして互いに顔を見合わせて少し笑みを見せると、何やらコソコソと話し始めた。
「ハルは素敵な女性だね」
「知ってる〜!惚れんなよ?」
「大丈夫。人の彼女に手を出す趣味はないよ」
「(あ、そうか…今俺の彼女設定なんだった。勢いでそういうことにしたけど、あとでスズに謝んないとな…)お、おう…!」
「じゃあありがとう!楽しかったよ」
「おーう!しっかり働け公僕!」「頑張ってね〜!」
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神門と別れた後、スズと一ノ瀬は再び手を繋ぎながらホテルへの道を歩いていた。
思わぬ素敵な出会いに、2人の会話は弾む。
「おもしれーお巡りだったなー」
「うん!あんな柔軟な考え方のお巡りさんもいるんだね〜」
「あいつとは、いい友達になれそーだわ!」
「ふふっ。良かったね!さっきの2人、本当に楽しそうだったもん」
「確かに楽しかった!……あ、そうだ。スズ、ごめんな」
「ん?何、急に」
「いや…調子に乗って、俺の彼女ってことにしちゃったからさ…」
「あ〜全然!鬼ヶ島戻ったら滅多に会えないし、きっとそんなこと忘れちゃうよ。だから気にしないで?」
「…そうだよな。ありがと(…あれ?何か今、モヤっとした…?何でだ…)」
自分の心が少しずつ変化していることに気づかぬまま、一ノ瀬はスズの手を改めて強く握り締め歩き続ける。
2人に特大のゲンコツが落ちるまで、あと1時間…
to be continued...
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