並木度と共にアジトの入口で待つこと数十分…

ようやく無陀野と生徒たちが到着し、スズと数時間振りの再会を果たすのだった。


「先生!みんな!良かった…!」

「ん?お前、何でそんな不安そうな顔してんだよ」

「私らに何があったか知らねーからだろ。なっ、スズ?」

「うん…詳しい事情は聞いてなかったから」

「大丈夫ですよ!ケガしたりとか、そういうんじゃないですから!」

「そっか…!」


遊摺部の言葉に笑顔を見せるスズだったが、ふと後ろの方に立つ皇后崎が静かなことに気づく。

普段から積極的に喋るタイプではないが、今日の彼はいつも以上に静かで、暗い影を落としていた。

並木度が生徒たちに今いる場所について簡単に説明する中、無陀野がスッとスズの隣に並ぶ。


「心配かけて悪かったな」

「いえ!無事に合流できて良かったです」

「そうだな。詳しいことは「四季が来てから、ですよね!」

「! ふっ…よく分かるな」

「当然です。元秘書ですから」


"元秘書"の部分を周りに聞こえないよう小声で言うスズ。

その表情は明るく、以前の拗ねたような態度は微塵もなかった。

それは京都の旅館でしっかり話し合い、お互いの想いを確認し合ったからこそ。

だが無陀野は何か思うところがあるようで…


「無人先生?どうかしました?」

「…"元"はつけなくていい」

「へ?」

「もう一度、俺の秘書をやってくれないか」

「!」

「お前といると、仕事上も普段の生活もストレスなく過ごせるんだ。常に心が落ち着いてる」

「先生…」

「もちろん前にも言った通り、俺とスズの関係性は公にはできない。また嫌な思いもさせるかもしれない。

 だがそれでも、俺はお前に傍にいて欲しい。一番近くで、俺をサポートして欲しい。

 ……俺のエゴなのは百も承知だが、前向きに検討してみてくれないか」

「やります」

「…は?」

「そもそも私、嫌になって先生の秘書を辞めたわけじゃないです」

「それはそうかもしれないが…ちゃんと考えたか?」

「はい。それに…」

「?」

「ボスのワガママを聞くのも、秘書の大切なお仕事ですから!」


そう言ってイタズラっ子のような笑みを向けてくるスズに、無陀野は珍しく目を見開く。

想定していた反応のどれとも違う答えを返してきた目の前の少女。

だがそれは、彼が一番望んでいた答えでもあった。

"傍に置くからには、何があっても必ず守る"

そんな決意を込めてスズの頭を優しく撫でた無陀野は、"ありがとう"と静かに言葉を返すのだった。



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