並木度の説明を聞きながら足を進めた一行は、アジト内の少し大きめな通路に集まった。

そこでこの後の動きについて、無陀野と並木度が会話を進める。


「ナツ君は別の隊員が迎えに行ってます」

「何から何まで悪いな」

「この後の予定は?」

「仕方ない、学園に戻る。スズ、船の手配頼む」

「分かりました。一番早い時間で聞いてみます」

「(良かった…帰るんだ…)」

「はぁ!?また何もせず終わりかよ!?こっちは京都から不満溜まってんだぞ!」

「ちょっ!碇君、落ち着いて…!」


また何も得られなかったと不満爆発の矢颪をなだめるスズ。

そんな2人の耳に、偵察部隊の隊員たちの声が聞こえてくる。


"危険な状況にした奴らが何言ってんだ"

"街中で堂々と血使うとか素人が…"


どれもこれも否定的で、イライラした雰囲気を含んだ内容だった。

それにまた怒りを露わにする矢颪とは対照的に、皇后崎はここでも終始暗く沈んでいた。

と、そこへようやく遅れていた一ノ瀬が到着する。

自分の顔を見るなり、嬉しそうに手を振ってくる彼と共に、スズは無陀野から事の次第を聞いた。


「え?子供助けたの!?おま…マジで!?超かっこいいな!」

「そういうことでしたか…(だから皇后崎君、あんなに落ちてるのか…)」

「なーんだ!アクシデントっていうから何事かと思ったわ!あれ!?でもなんでこんな殺伐としてんの?」

「お前…空気読めねーな」

「え?褒め称える空気だろ?」

「くく…本来ナツ君の反応が正しいよね。この空気で言えるのも凄いけど」

「? サンキュー?…スズ、俺そんなに変なこと言ったの?」

「ううん、人としては大正解だよ!ずっと今のままの四季でいてね?」

「おう!」


スズに笑いかけられると、一ノ瀬は嬉しそうに言葉を返す。

まだ鬼として覚醒してから日が浅い一ノ瀬の純粋で素直な反応に、スズの心も温かくなる。

彼から元気をもらったスズは、無陀野から軽く注意を受けている皇后崎の方へ近づいた。


「お前がやったことは間違いじゃない。が、正解でもない。体術のスキルを磨け。次から血を使わず対処できるようにな」

「でもお前が子供助けるって意外だな!蹴って飛ばして歩いてるイメージだわ!」

「すごい偏見だね」

「救えていない…俺はまた救えなかった」

「また?」

「皇后崎君…そうだ!あとで病院に電話かけてみるよ!」

「!」

「様子分かったら伝えに行くね」

「……あぁ」


スズの提案に一瞬パっと顔を上げた皇后崎だったが、またすぐに下を向いてしまう。

その様子に不安を募らせるスズの思考を遮るように、並木度が部屋の準備が整ったことを伝えに来た。


「スズ、船の方はどうだ?」

「朝一の便を押さえました。大丈夫です」

「ありがとう。ということで、日の出前に出発する。それまで寝て、体力回復に努めろ。スズ」

「はい」

「さっきの電話の件、分かってると思うが…」

「こっそり、怪しまれない程度にします」

「ならいい。お前も疲れてるだろうから、ちゃんと休めよ」

「押忍!」


そうして各自が部屋に入り、朝までの時間を過ごした。


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部屋に入るなり、スズは早速病院へと電話をかける。

現場で事故を目撃したが、もしかしたら親戚かもしれない。少しでいいから様子を…と不安そうな声で尋ねるスズ。

電話口の相手も、こちらが女性だったことで警戒心が薄れたのか、大事には至っていないと一言だけ返事をくれた。


「(皇后崎君もこれで少し安心するかな…!)」


すぐに返事を伝えようと、スズは皇后崎の部屋へと向かった。

だがいくらドアをノックしても反応がなく、試しにドアノブを握ってみる。

抵抗なく開いたドアの向こうに、皇后崎の姿は見当たらなかった。



to be continued...



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