「皇后崎君…?」


彼の部屋に入ったスズは、主のいない部屋で立ち尽くした。

呼びかけても、当然返ってくる声はない。

焦る気持ちを抑えながら部屋を見回していると、不意に机の上に置いてあるメモが目に入る。

そこには一言…"申し訳ない"と綴られていた。





第23話 よかった 〜 覚悟





皇后崎の部屋を出ると、スズはその足で担任の元へと走った。

夜という時間帯もあり控えめにノックをしたが、こちらの主はすぐに姿を見せる。


「スズ。どうした?」

「遅くにごめんなさい。今、皇后崎君の部屋に行ったらこれが…」

「……部屋にはいなかったんだな?」

「はい。もしかしたら病院に行ったのかも…」

「可能性はあるな。…あいつらをさっきの場所に集めてくれ。俺もすぐに行く」

「分かりました…!」


10分後…

スズの呼びかけに応じ、羅刹の生徒たちは再び集合した。

そして並木度も含めた全員で、起こった事態を共有する。

スズが持って来たメモを見せながら、無陀野は静かに話し始めた。


「これだけ置いて、皇后崎が消えた」

「あいつ、何やってんだよ」

「でもあいつの様子おかしかったな。少し変だったぜ?なんか…らしくねぇつーか…」

「そうなんだよね…事故にあった女の子のこと、かなり気にしてたし…」

「最悪のケースを見越して動いた方がいいかもですね」

「さっきの件で桃も警戒しているだろうしな」


周りにいた練馬の隊員たちは、無陀野の話を聞くなりザワザワと落ち着かなくなる。

練馬の桃太郎が動くかもしれない…と。


「この辺の桃太郎ってヤバいの?」

「練馬区担当の桃太郎は…いろんな意味でヤバいね」


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場所は変わり、桃太郎機関22部隊(練馬)の事務所内。

最奥にある部屋には、部隊のツートップ…隊長・桃華月詠と副隊長・桃角桜介が顔を揃えていた。

真面目な顔で10段のトランプタワーを作っている変わり者と、そんな上司にタメ口で話しかける色黒の男。

訪問者である桃寺神門は、初めて相対する2人を不思議そうに眺めていた。

だが神門と共に訪ねてきた、彼の上司である桃巌深夜は、臆することなく練馬コンビへ"うまい話"を持ちかける。


「うまい話?人のシマ入って何ほざいてんだ?管轄外の勝手な行動なら、規律違反って名目で殺すぞ?」

「お前らも喜ぶ話だぜ?」

「黙れ。テメェは信用ならねぇ」

「(深夜さん嫌われてるなぁ。根本の部分は一緒なのに)」

「月詠!こいつらどーするよ!?」

「そうだな…ミョリンパ先生に示してもらう。ちょっと待ってろ」

「テメェで決めろ!」


副隊長の叫びも虚しく、月詠はさっさと愛用の占い本を広げる。

そしてその結果は…


「"次なる段階の一歩目が来る"と示されてる。さてどーゆうことかな?」

「あながち占いも馬鹿にできねぇな。鬼神の子に繋がる糸口を見つけた」

「え?」「あ?」「…」

「やっと…聞く気になったか?おまけに上手くいけば、例の生け捕り対象の鬼も手に入るかもしんねぇぜ」

「! それは…木下スズのことだね」

「誰だよ、それ」

「桜介も気になっていただろ。僕たちにとってのナイチンゲールだ」

「…治癒の力があるっつー鬼か!」

「話、続けるぞ?」


そう言ってニヤリと笑みを浮かべた深夜は、さらに話を進めるのだった。



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