一方、無陀野組と淀川・並木度コンビはといえば…

偵察部隊が突き止めた、半グレ集団の溜まり場であるキャバクラ。

そのキャバクラが入っているビルの向かいに建つマンションの屋上に一行は顔を揃えていた。

緊張モードが漂っているのかと思えば、若人たちはとある話題でキャッキャッしている。

場の中心には、照れ臭そうにしているスズがいた。


「やっぱスズは天使だ!!」

「へ?きゅ、急に何…!」

「さっきの言葉、めっちゃカッコ良かった!」

「"私がいる限り、誰も死なせない"ってやつだろ?確かにあれはシビれたな!」

「ちょ、ちょっと碇君まで!やめてよ、恥ずかしいから…!」

「僕もあの言葉には感動しました!」

「私もです…!スズちゃんはすごいです…!」

「2人とも褒めすぎだよ…!」

「僕も胃が痛いのが少し治まった」

「それは気のせいだって!」

「もうちょっと弱々しくいてくんねーと、守りがいがないんだよな〜」

「いや、水鶏!私、弱々しい方だと思うよ!?」

「おい、ガキ共!喋ってねーでこっち来い」


出発前に自分が発した言葉を褒め称える同期たちに、赤い顔でワタワタしているスズ。

そんな姿を穏やかに見つめていた淀川だったが、誰にも気づかれないうちに表情を切り替えると、偵察部隊隊長として声をかけた。


「あのキャバクラが半グレの溜まり場だ」

「んじゃあサッと乗り込もうぜ!」

「馬鹿か、お前は。頭使え。まずは状況の確認と整理だ。眼鏡!索敵ができんだろ?やってみろ」

「え!はい!」


淀川から指示を受け、能力を発動する遊摺部。

だが京都の時と違い、どうにも索敵が上手くいかない。

焦りを見せる遊摺部を見守っていた淀川は、瞬時に彼の能力の欠点を見抜いた。


「お前の能力はいくつかデメリットがある。まず動けない。

 それと建物とか階層が沢山ある所だと人が重なって正確な位置が掴めない」

「(京都の時は人がいなくなればいいだけだったから気にならなかったのか…)」

「テメェはまだ発展途上ってことだ」

「じゃどーすんだよ?」

「ばーか!だから俺らがいんだろ。役に立たねぇことは百も承知だ。だったらせめて吸収しろ。お前らは待機だ」


"偵察部隊の仕事ってやつをしっかり見とけ"

淀川はそう言って、部下の並木度と共に動き出す。

2人の頼もしい背中を見つめながら、スズは彼らのやり取りに耳を澄ませた。


「ここならカメラの死角だ。馨、まずは店内の人数と構造を調べろ」

「わかりました」

「ど…どうやるんですか?」


遊摺部からの問いかけに、並木度は自身の血を入れた小瓶を出して軽く振ってみせる。

スズも彼の能力を見るのは初めてであるため、興味深そうに傍へと寄って来た。

並木度の能力は振った血の音の反響を利用して、人数や建物の構造を把握するというものだ。

彼の血が入った瓶さえあれば第三者でも使えると聞き、早速一ノ瀬がやりたいと騒ぎ出す。

チャカチャカチャカともの凄い勢いで瓶を振る一ノ瀬の横で、並木度は更に説明を加えた。


「デメリットは情報処理が大変なところ。一気に凄い量の情報が脳に飛び込んでくるから…情報酔いする」

「えっ!ちょっと四季、めちゃくちゃ振ってたけど大丈夫…って、あー!!」

「うわー!吐いた!」


スズはケポケポと吐き続ける一ノ瀬に駆け寄ると、優しく背中をさすってやる。

"スズ、助けて〜"と弱々しく言葉を発する一ノ瀬は、気持ち悪さから来る涙目で天使を見上げた。

続けて遊摺部も挑戦するが、こちらもあえなく撃沈した。


「私達も使えるとは言え、そう簡単にはいかないですね」

「そうだね。僕も使い過ぎると高熱出るし。経験上、IQ高い人は使えるみたいだよ」

「IQかぁ…じゃあ私もダメかもです」

「ん〜いけそうな気もするけど…あとで少しやってごらん?スズちゃんの役割的に、出来た方が便利だと思うから」

「あ、確かに!…うん、頑張ります!」


迅速な治療が求められるスズにとって、今誰がどこにいるかを把握するのはとても大事なことだ。

そのために並木度の能力は間違いなく役に立つ。

スズは愛用のノートを取り出すと、彼の能力を記したページを開き、"要特訓!"と太字で書き加えた。

そんなやり取りを見つめていた淀川が、痺れを切らして並木度に声をかける。


「遊んでねぇで状況教えろ」

「少し変ですね。あの店内、鬼1人の反応しかありません」

「絶対皇后崎じゃん!」

「一番奥の部屋に監禁されてますね」

「生きてはいます、よね?」

「うん、そこは大丈夫だよ」

「拉致った奴生かして置いとくのは変だな。罠か慌てて逃げたかのどっちかか?まぁ見てくりゃわかるか」


そう言った淀川は自身の血を舐め、あっという間に姿を消した。



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