10分間透明になるという淀川の能力を初めて見た面々は、服まで消えるその見事さに驚きを隠せない。

最早声だけしか聞こえなくなった彼に一言かけたいと、スズはキョロキョロと辺りを見渡す。

その様子を見て少し口角が上がった淀川は、彼女の目の前に立ち、頭にポンと手を乗せた。


「中を確認してくる。お前らは待機だ」

「あ、真澄さん!あの…!」

「ふっ、ここだ。何だ?」

「うわっ…!あの、桃がいないとはいえ、無茶はしちゃダメですよ!」

「分かってる。大丈夫だから、俺の合図があるまでお前はいい子で待っとけ」

「はい!気をつけて…!」


笑顔で自分を送り出してくれるスズに、見えないながらも少し表情を緩める淀川。

そして小さくお礼を言ってから、彼は向かいのビルへと向かうのだった。


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淀川が去った屋上は、彼から連絡が来るまで待機状態となった。

そんな中で遊摺部は輪から外れ、1人手すりにもたれていた。

担任として無陀野が声をかければ、彼は沈んだ声で話し始める。

淀川や並木度の能力を目の当たりにし、遊摺部は自分の不甲斐なさを痛感していた。


「真澄たちの能力は確かに凄い…でもあいつの透過能力も、最初は30秒しか続かなかった」

「え!?」

「必死に努力して経験を積んで、自力で能力を伸ばしたんだ。落ち込むのは、経験と努力を重ねてからにしろ。

 お前の能力も捨てたもんじゃない…が、腐らすか伸ばすかは好きにしろ」

「……ありがとうございます!」


無陀野の言葉に、どこか吹っ切れたような表情を見せた遊摺部の目には光が戻っていた。

似た能力を持つ並木度の元へ駆け寄っていく彼の後ろ姿を見やる無陀野。

その彼の横には、いつの間にかスズの姿があった。


「遊摺部君、大丈夫ですよね…」

「さぁな。あとはあいつ次第だ」

「なら、きっと大丈夫です!やる時はやる子です!」

「あぁ。ところで、出発前のあの言葉だが…」

「! あ、あれは…つい、大きいこと言っちゃって…その「ありがとう」

「…へ?」

「あの言葉は、全ての鬼にとって支えになる。お前があの覚悟を持ち続けてくれる限り、俺たちは前に進める。もっと強くなれる」

「無人先生…」

「…四季が言ってたことがようやく分かった気がする」

「?」

「本当に天使みたいな存在だな…スズは」


穏やかな表情でそう言った無陀野は、優しくスズの頬に触れる。

言われたことと、やられていることの刺激が強すぎて、スズの思考は完全に停止した。

目の前の女子が大変な状況になっているなどとは微塵も思わず、無陀野はスッと手を離すと、さっさと歩き出す。


「? スズ!どうした?行くぞ。そろそろ真澄から連絡が来る頃だ」

「え、あ、はい…!い、今行きます!!」


淀川が偵察に行ってから約15分後…

彼からの合図で、無陀野組と並木度は移動を開始する。

そしてキャバクラ内の一番奥の部屋までやって来ると、矢颪の能力でドアをぶち破った。


「皇后崎!?お前!超!監禁されてんじゃん!すんげぇわかりやすく監禁されてる!」

「黙ってろ」

「皇后崎君、大丈夫!?ケガは?」

「…平気だ」

「良かった〜」


手錠でイスに手足を拘束されていた皇后崎だったが、幸いなことにスズの出番はなくて済んだ。

だが久しぶりの会話もそこそこに、手錠を外された皇后崎は、慌てた様子で部屋を出て行こうとする。


「手間とらせやがっ…え?オイ!」

「どこへ行く」

「時間がねぇ。子供が人質にされてんだ。すぐ行かねぇとやばい」

「ちょっと待って、皇后崎君!ねぇ、本当に何もされてない?」

「そう言ってんだろ」


何か違和感を感じ、皇后崎の顔を覗き込むスズ。

その顔を、この場にいない第三者が見ているなどとは夢にも思わずに…


「ふふ〜ん。無陀野ぉ…噂は聞いてるが、こうやって見るのは初めてだな。

 ふ〜ん、ふふん。一ノ瀬…写真で見るより全然ガキだな。と、こいつがスズか…桃関にロクな写真がねぇから、正面の顔は貴重だな。

 お前ら全員、みーつけた」



to be continued...



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