桃巌深夜の能力。
それは左目で対象人物の視覚を覗けるというものだ。
自分が持つ細菌を含んだ物や体液を取り込むことで、能力の対象者になる。
拉致された際、皇后崎は深夜の細菌が入った水を顔にかけられていた。
つまり今、彼の視覚は…本人の知らないうちに深夜に全て覗かれている。
第25話 2人きり
焦ったように部屋を出て行こうとする皇后崎を一旦落ち着かせ、何とかこの場に留まらせる。
皇后崎を中心に集まった面々は、とにもかくにも彼から話を聞き出そうとした。
「なるほど。お前を拉致した奴が人質をとってる…か」
「そうだ。わかったろ、時間がない」
「待てガキ。聞きたいことが色々ある。すぐに事情聴取だ。子供の方はこっちで対処する。テメェは動くな」
「子供の顔知らないだろ?」
「調べれば済む。わかったらお前は…」
「時間がねぇって言ってんだろ…?」
淀川の胸倉を掴んでそう言った皇后崎の顔は、いつもの冷静さがまるでなく、とても危険な状態だった。
そうして言い合いを続ける2人を見つめながら、スズと一ノ瀬は両サイドから無陀野に近寄って声をかける。
「なぁ先生。あいつがあんなテンパるの珍しくね?なんか理由があるんじゃねぇの?」
「私もそう思います。あの姉妹のこと、ずっと気にかけてたし…」
「ほら、スズもこう言ってるしさ。行かせてやった方がよくね?」
「……皇后崎、戻り次第必ず話を聞かせろ。約束できるなら、俺と一緒に行くことを許す」
「許してんじゃねぇよ。甘すぎやしねぇか?」
「こいつのことだ、行かせるまで話さない。行かせた方が効率がいい。四季、お前も来い」
「え?俺も?」
「皇后崎が先走ったらお前が止めろ」
「えー…」
「スズも一緒だ」
「行く!」
「救護班として同行を頼む」
「はい!」
「いいな?戻ったら全て話せ」
「わかった」
スズと一ノ瀬に声をかけた無陀野は、最後にそう言って皇后崎に釘を刺した。
同期の勝手な行動に舌打ちをしつつ、残されたメンバーに証拠品回収の指示を出す淀川。
だが彼自身はその作業に加わらず、静かにとある人物の元へと歩み寄る。
「スズ」
「真澄さん!」
「気をつけて行けよ」
「はい!」
「(行かせたくねぇって…思っちゃいけねんだろな)」
「真澄さん?どうしました?」
「ん?何でもねぇよ。…血、入れ替えとくか」
穏やかな口調でそう言うと、淀川は慣れた手つきでスズの首に下がっているペンダントトップを外す。
そして中身をその場に捨て、新しい血を自分の手から流し入れた。
それを再び元の位置に戻せば、スズは安心した表情でお礼を伝えた。
「ありがとうございます」
「あぁ。…待ってるから、ちゃんと戻って来いよ」
「は、はい…!」
淀川に優しく頭を撫でられると、スズの顔は少し赤みを帯びる。
それから皇后崎の身支度が整うを待ち、スズ達4人は夜の街へと出発した。
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