スズを送り出した無陀野は、今一度桜介と向かい合う。
2人の戦いが熱を帯びていく中、1年生コンビの方はようやく目的地周辺に到着した。
だが路地から大通りへと出た一ノ瀬と皇后崎の目に飛び込んできたのは、燃え盛る炎と煙に包まれた病院だった。
第26話 繚乱時雨 〜 悪くない
一ノ瀬達の到着から約5分後、スズも無事に病院へと辿り着いた。
時間と共に火は勢いを増し、それに合わせて野次馬の数も増えていく。
その野次馬に紛れながら、静かに病院内へと入って行くスズ。
入ってすぐの受付辺りに見覚えのある立ち姿を発見し、安心したのも束の間…
具合が悪そうな彼の様子に、スズは慌てて駆け寄った。
「皇后崎君…!」
「! お前…遅ぇぞ…どこ行ってた…」
「うおっ…!大丈夫!?」
頭を押さえながら立っていた皇后崎は、傍に来たスズの姿を見た途端、フッと体の力が抜けてしまう。
咄嗟に支えてくれるスズに少し体を預けた後も、彼は遅れて到着した同期に対し説教を続ける。
"1人で動くなって言われてんだろ"
"桃に見つかったらどうすんだ"
"京都の時も言っただろ"
ツラそうにしながらも止まることのない言葉に、スズはひたすら謝罪とお礼を伝えるのだった。
本当なら今いない一ノ瀬のことや、彼自身の体の不調について聞きたいのだが、皇后崎は全く口を挟む隙を与えない。
と、そんな時…
患者である高齢の女性を背負った一ノ瀬が、もの凄い勢いで走って来る。
そして非常口から彼女を逃がすと、バッと同期の方を振り返った。
「皇后崎ぃ!あとどんくらいだ…って、スズ!!」
「四季!良かった…どこ行ったのかと思ってた」
「え?皇后崎から何も聞いてねぇの?」
「あ、う、うん…ちょっとタイミングが…」
「お前何やってんだよ!つーか、スズから離れろって!!」
「うるせぇ…!頭に響く…!ゲホッ…」
スズの肩に手を置いて寄りかかっていた皇后崎につっかかる一ノ瀬はとても元気そうで、火事の影響を微塵も感じさせない。
その姿を不思議に思いながら現状を問いかければ、彼は生き生きとした表情で答え始めた。
鬼神の力なのか、火が全く熱くないこと。
皇后崎が患者の居場所を特定し、自分がそこへ向かい救助していること。
患者の居場所特定には、並木度の血を入れた瓶を使っていること。
「四季すごい!よく思いついたね!」
「へへっ」
「あ、そういうことか…だから皇后崎君、そんなに具合悪そうなんだね」
「お前も知ってんのか…大体なんだこれ…頭が割れそうだ…」
「偵察の兄ちゃんがくれたんだよ」
「IQ高い人なら使えるって言われたんだけど、私達じゃ手に負えなかったんだ」
「お前が普通に使えんのはむかつくけどな…」
「普通じゃねーよ。頭がガンガンしやがる…吐きそうだし、長く使ってらんねぇよ。だから早く行け!ノロマ!」
「命令すんな、バーカ!ハゲろ!」
「口喧嘩しないの!今は2人が頼みの綱なんだから。とりあえず私はここで皇后崎君の治療をする」
「えーっ!皇后崎だけずりぃ!!」
「何言ってんの。四季がいないとこの作戦は成立しないんだから、しっかり頼むよ!」
スズが笑顔でそう言ってグーにした手を差し出せば、一ノ瀬は明るい表情で自身の手をコツンと当てる。
そうして指示された場所へと走る一ノ瀬を見送ると、スズは皇后崎を火からなるべく遠いところへ座らせるのだった。
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