フロアの中でも比較的火の影響が少ない場所を選んで、スズは皇后崎を座らせる。

それから目線を合わせるように、膝をついて彼の顔を覗き込むスズ。

吐き気が酷いのか額には脂汗が浮かび、頭痛のせいで表情も苦しげだ。


「皇后崎君、手出して?」

「手…?」


素直にスズの指示に従った皇后崎は、ゆっくりと右手を差し出す。

スズはその手を取って少し傷をつけると、そこから自身の血を注入し新たな血液を作り出す。

空気を多く含んだ新鮮な血が流れれば、皇后崎を悩ます吐き気や頭痛がいくらか緩和するだろうと思っての行動だった。


「…どうかな?少しは楽になってきた?」

「あぁ…さっきよりだいぶマシだ」

「良かった…!」

「スズー!!次、どこ!?」

「皇后崎君、いける?」

「……2階の南側」

「四季ー!2階の南側!」

「オッケ!」

「急げ!ペース落ちてるぞ!」

「人担いでんだ、あたりめぇだろ!」

「もう、すぐケンカするんだから…」


皇后崎が読み取った位置をスズが聞き、それを一ノ瀬に伝えて彼が走る。

男2人が直接やり取りをするとどうしてもケンカになるため、二度手間感は否めないがスズはこれがベストだと判断した。

そうして作戦を遂行すること数十分…

残すところあと1人という局面を迎え、ようやく終わりが見えてくる。

救出後すぐに自分達も脱出できるようにと、スズと皇后崎も入口付近まで戻って来ていた。


「おい!あと何人だ!?」

「…あと1人だ!」

「お前が気にしてた子は!?」

「まだだ…」

「その子がラストか…!」

「体力的にもそろそろ限界だと思う。その子も、皇后崎君も…」

「じゃあ急ぐぞ!どこだ!」

「北側の…3階だ…」

「! 皇后崎!大丈夫か!?」「皇后崎君…!」

「うるせぇ…」

「スズ、こいつのこと頼む!」

「うん!」


2人が振り返った先で、皇后崎の目と鼻から血が流れ出る。

スズが血を入れ替えていたものの、それで追いつけない程に彼の体は消耗していたのだった。

顔の血を拭ってくれるスズの支えがないと、立っているのもやっと…という感じだ。

そこへ最後の1人である少女を抱えた一ノ瀬が帰って来る。


「スズ!皇后崎!」

「!」「四季!」

「いたぞ!生きてる!…スズ、助かるよな?」

「…だいぶ弱ってるけど大丈夫!すぐ診てもらおう!」

「よし!早いとこ外出よう!」


少女を診るため自分から離れていたスズが、脱出に向けて手を貸そうとこちらへ戻って来ようとする。

彼女の背後には少女を抱える一ノ瀬。

3人の頭上にある天井が崩れかかっているのを知ることが出来たのは…皇后崎だけだった。

"危ない…!"

そう言いながらスズと一ノ瀬を突き飛ばした皇后崎は次の瞬間、瓦礫の下敷きになっていた。



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