炎に包まれた病院から脱出した3人は、人気のない公園に辿り着いた。
2つあるベンチに一ノ瀬と皇后崎がそれぞれ座り、ようやく一息つく。
スズはと言えば、一ノ瀬が不機嫌モードに突入するのをスルーし、治療のため皇后崎の右隣に腰を下ろすのだった。
第27話 全ては俺の思うまま
「腕パンパン。男に肩貸すとか最悪だぜ」
「別に頼んでねぇけどな」
「お前本当むかつくな」
「ふん」
「無事に出て来れたんだから、少しは仲良くして下さい。迅、痛いとこある?」
「(頭はまだボーっとしてっけど…)いや、大丈夫だ」
「なら良かった!じゃあもう少しだけ血入れ替えとこう。まだ少し変な感じするんじゃない?」
「! ……あぁ」
言わずとも自分の不調を見抜くスズに、皇后崎は改めて彼女のすごさを実感する。
先程と同様に手を出せば、その手をギュっと握り締めて血を送り込むスズ。
歩いてる時に感じた胸のざわめきが再び皇后崎を襲い、彼はスズから視線を外せずにいた。
「…ん?どうしたの?」
「…別に」
「ふふっ。変なの」
「…何かそっちいい雰囲気でヤダ!俺もスズに治療して欲しい!」
「それだけ叫べるなら大丈夫です。安静にしててくださ〜い」
傍から見れば高校生カップルが手を繋いでいるようにしか見えないため、一ノ瀬が騒ぎ出すのも無理はない。
スズに軽く受け流され、彼は分かりやすく不貞腐れた。
そんな状態が1〜2分続いた後、一ノ瀬はようやく気持ちを切り替えて皇后崎へと声をかける。
「大体あの子なんなんだ?手貸したんだから教えろよ」
「私も気になってた。もしかして知り合いだったりする?」
「いや、違う。あの子は…」
「どした?」
「病院に火を点けたのは、俺を拉致った桃で間違いない…でもなんで燃やした?
俺を拉致るために人質にされた…人質なら殺しちゃダメだろ。念のための口封じ?まだ利用価値はあるはずなのに…」
「? どーゆうことだ?」
「他に都合のいい人質が見つかったとか?」
「それはあるな。あの女の子には妹がいた…もしかして妹の方を人質に…?」
「でもなんで人質なんかとるんだよ?」
「四季、お前だよ。あの桃はお前目当てだ。お前を殺すための交渉材料にする気なんじゃ」
「四季が鬼神の子だからかな…」
新鮮な血が体内を巡ることで、少しずつ脳が活性化してきた皇后崎。
スズや一ノ瀬との会話を通して、自分の考えを整理していく。
と、ポツリと言葉を漏らしたスズに反応しようとした皇后崎は、もう1つの可能性に行き当たる。
「…お前もか」
「へ?何が?」
「四季とお前が仲間だっていうのはもう知られてるはずだ。だとしたら、一緒に手に入れようと考えても不思議じゃねぇ」
「まさか〜」
「能力がバレたら狙われるんだろ?京都の一件で、桃側が本格的に動き始めてるかもしれない」
「確かに、先生にも細心の注意を払えとは言われたけど…」
「おい!俺を置いてくなって!何でスズの能力が桃に狙われんだよ?」
「俺もそれは聞きたかった。何でだ?」
「私の力は、鬼だけじゃなくて桃太郎も治せるの」
「「!」」
驚きの表情を見せる一ノ瀬と皇后崎に、スズは以前無陀野が話してくれたことを伝える。
治癒能力がない桃にとって、彼女の力は喉から手が出るほど欲しいものなのだと。
だが自分の血では戦うことも防御することもできない…だから身を守るために無陀野から体術を学んだ。
そしてそうした理由から、大っぴらに能力を使うことが禁じられているのだ。
スズの言葉を珍しく静かに聞いていた同期コンビは、彼女の話が終わると揃って黙り込む。
「…とまぁこんな感じ。話してて、我ながら危ないな〜って思うよ」
「「…」」
「あれ、2人とも聞いてた?反応ないと気まず「大丈夫!」
「四季…?」
「俺がスズのこと守る!一緒に祭り行った時みたいに、俺が絶対傍にいるから。だからスズは笑ってて!」
「! うん。ありがとう!」
「へへっ。てことで、俺の治療して!」
「治療するところないって言ってるでしょ!」
自分を挟んでやり取りを交わす2人の間で、皇后崎は変わらず沈黙のまま。
何か言いたそうな顔で、チラッとスズの方へ目をやる彼の様子は、誰にも気づかれることはなかった。
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