会議室に集まった無陀野、淀川、並木度の大人組。
生徒たちのことも含めた、この後の動きについて話し合いを終えると、最後に淀川が無陀野へ声をかける。
「スズはどうする。やっぱり置いてくのか?」
「あいつ次第だ」
「! じゃあ行きたいって言ったら連れてくつもりか」
「あぁ。俺が一緒なら問題ない」
"人手は多い方がいいだろう"
そう言って会議室を出て行く無陀野を、偵察部隊の2人は珍しいものでも見るかのように見送った。
意識的か無意識なのか分からないが、傍から見ればスズに対してかなり過保護な無陀野。
今回も安全な場所で留守番させるものだと思っていた。
「本当に人手のことだけを考えて言ったんでしょうかね」
「どういう意味だ」
「いや、隊長のライバルになるんじゃないかな〜と思っただけです。行きましょう!」
並木度の発言に少し首を傾げながら、淀川もまた彼に続いて部屋を出て行くのだった。
第29話 疑心暗鬼 / 悲傷
会議室を出た淀川は、部下たちにテキパキと指示を飛ばす。
彼に鍛えられているだけあって、皆が皆動きに無駄がなく、スムーズに事は進んだ。
「真澄隊長!最低限持っていける資料等まとめ終わりました」
「したら残りは処分して、お前ら隊員は別アジトに移動しろ。それと1つ頼みがある」
「はい?」
「俺らも移動か?」
「つまんねーな」
部下への頼み事が終わると、淀川は続いてブーブー文句を言っている若者たちへと指示を出す。
今回ばかりは、彼らの力が必要となるようだ。
「お前らには働いてもらう。糸口になる半グレを捜す仕事だ。桃と繋がる"関東ナッツ連合"はいくつかの店を経営している。
どっかに溜まってる可能性が高いけど、こっちは人手が足りねぇ。だからこんな感じでバラけて、半グレどもを捜してもらう」
「皇后崎は?」
「あいつには外れてもらう。あいつは他の隊員と移動してもらう。どんな能力かけられてるかわからねぇからな」
スズからの助言を受け、皇后崎は別室でヘッドホンにアイマスク姿で待機をしている。
それ以外の面々は矢颪・遊摺部、一ノ瀬・屏風ヶ浦、手術岾・漣でそれぞれペアを組み、半グレ捜索へと向かうことになった。
気合いを入れる仲間たちを寂しそうに見つめるスズに気づくと、淀川はスッと隣に並び、顔を覗き込みながら声をかける。
「スズも行きてぇか?」
「えっ!」
「ふっ。そんな顔してたぞ」
「…皆頑張ってるし、それはもちろん行きたいですけど…でも、分かってますから大丈夫です!」
「あいつと一緒なら参加してもいいってよ」
そう言って淀川がクイっと顎を向けた先には、腕を組んで立つ無陀野の姿があった。
驚いたように自分を見つめてくるスズに、無陀野は軽く頷いて見せる。
「どうする?俺と来るか?」
「はい!ありがとうございます!」
「5分後に出る。準備しておけよ」
「了解です!」
自分も役に立てると喜ぶスズに目をやる無陀野と淀川は、同じように優しい眼差しだった。
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