支度を済ませ、出発まで少し待機していたスズの元に、一ノ瀬が駆け寄って来る。

さっきのやり取りの間中ずっとソワソワしていた彼は、スズが1人になるタイミングを待っていたのだ。


「参加できて良かったな!」

「うん!これで少しは役に立てるよ」

「? スズはいつも役に立ってるじゃん。俺はスズにカッコいいとこ見せたい!って思うと頑張れる。これって役に立ってるってことだろ?」

「あははっ!そうだね。…四季は本当いつも私に元気をくれるね。ありがと!」


スズに笑いかけられ、嬉しそうな表情を見せる一ノ瀬。

そんな彼のポケットから、突然スマホのバイブ音が聞こえてくる。

画面を見れば、そこには"神門"の文字。

彼のことを知っているスズと顔を見合わせてから、一ノ瀬は通話ボタンをタップした。


「もしもし?」

『あ、ナツ君?急にごめんね。ちょっと会って話したいことがあるんだけど、今から会えない?』

「え、今?今はちょっと無理だな…」

『忙しい感じ?何してんの?』

「あーちょっと色々な…!」

『え?言えないことしてんの…?』

「いや…そういうわけじゃない…けどまぁ…」


確かにこれから鬼機関の1人としてやろうとしていることを、正直に言えるはずもない。

せっかくできた新しい友人に本当のことを言えない苦しさが分かるから、スズもまた心配そうな顔を一ノ瀬に向けていた。

と言っている間に、出発の時間が来る。

"行くぞ"と声をかける淀川の声に反応し、一ノ瀬は慌てて電話を切った。


「神門、何だって?」

「会って話したいことがあるって言ってたけど…具体的には何も。それに何か様子がおかしかったんだよな」

「そっか…本当のこと言えたらいいんだけど…」

「だよなー。あー隠しごとすんのってしんどいなー…」

「…私、四季と神門なら大丈夫な気がする」

「そうかな?」

「うん。だってあんなに意気投合して楽しそうだったじゃん!」

「そう、だよな。っし、区切りついたら会ってみるか」

「それがいいよ!」

「今度はスズも一緒に行こうな!」

「え、いいの?」

「当然!ほら、意外と恋バナとかかもしんねぇじゃん。そういう時に女子の意見は貴重だろ?」

「じゃあ頑張んなきゃ!」


楽しそうに会話をしながら、大人組の元へ向かうスズと一ノ瀬。

彼女が"大丈夫"と言った2人が、この後最悪な形で再会することになるなんて…

一体誰が予想できただろう。



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