「半グレどもはあらゆる店や土地を持ってる!どこにいるか謎だ!けど必ず見つける!半グレどもが重要な糸口になる!」
"捜せ!"
淀川のその一声に背中を押され、街中へと散らばって行く面々。
無陀野とペアを組んだスズも足にローラースケートを装備すると、例の移動手段で捜索を開始する。
渡された店や土地のリストをしらみつぶしに当たって行く中で、効率重視のスズ・無陀野ペアのスピードはダントツだった。
仕込み傘に掴まったスズが地図アプリで道案内をし、無陀野の驚異的な脚力で現地まで向かう。
無陀野が中を確認している間に、スズが次の目的地を検索する。
この連係プレーで、渡されたリストは瞬く間にペンで消されていった。
そしてついに最後の1つを確認し終えると、2人は少し休憩タイムに入る。
無陀野が缶ジュースを手渡せば、お礼と共に受け取ったスズはそれを美味しそうに飲み始めた。
「お前のお陰で早く終わった。ありがとう。…まぁ見つからなかったのは不本意だがな」
「そうですね。リストにない、それっぽい場所も行ってみましょうか!」
「精が出るな。そんなに参加したかったのか?」
「はい!…皆が危険と隣り合わせで頑張ってる時に、私はいつも安全な場所で待機してるだけだから…何か申し訳なくて。だからこうやって少しでも役に立てて嬉しいんです!」
「そうか…悪かった」
「えっ!?な、何で無人先生が謝るんですか…!」
「守りたい気持ちが強すぎて、スズの行動を制限してた。それがお前の精神的負担になってると分かってやれなかった」
「え、あ、いや、違うんです!先生たちが私を守ってくれるの、すごく嬉しいです!自分の立場もちゃんと分かってます。
でも時々思うんです…私と一緒に行動する人は、必ず私を守るっていう仕事をしなくちゃいけない。
どれだけ強い人でも、1つ仕事が増えるっていう点においては間違いなく負担になります。
ケガをした時はその恩を返せるけど…そうじゃなければ、ただ負荷をかけてるだけで…そんな私に守られる価値があるのかなって」
「お前は自分が守られてる理由を分かってない」
「へ?」
「お前が守られてるのは、弱いからでも、戦えないからでもない。お前が俺たちを守ろうとしてるからだ。
自分で言ってただろ、俺たちの背中を守ると。そう言ってくれる仲間を守るのは当然のことだ。少なくとも俺は、スズを守ることを負担だと思ったことは一度もない」
言い方は淡々としているが、スズの方へ向ける無陀野の表情には、彼の強い意志が感じられた。
無陀野の言葉は、いつもスズの心を温かくする。
"元戦闘部隊のエリートとは思えないな…"なんてことを考えながら、スズは穏やかな気持ちでお礼を返すのだった。
「先生って、学生時代めちゃくちゃモテませんでした?」
「何だ、急に」
「だってこんなに優しくしてもらったら、女性陣は皆イチコロですよ!」
「…」
「無人先生?」
「お前に対する接し方を、他の奴にしたことはない」
「……え?ちょ、いや、え、それって…」
「前に言っただろ。相手がお前だからこの接し方になる。嫌なのか?」
「嫌とか、そういうんじゃ、全然ないです!ただ、その…え、だって、彼女さんとか…」
「そんなに俺のことが知りたいなら、いずれゆっくり話してやる。だから今は目の前のことに集中しろ」
「あ、はい!すみません…!…でも皆もきっと喜ぶと思います。先生の過去って気になるし!」
「皆?…あいつらに話すつもりはないぞ。お前にだけだ」
「え、な、なんで…?」
「スズだから。それ以外に理由がいるか?」
「!」
「飲み終わったなら行くぞ。他の場所も捜してみるんだろ?」
そう言って差し出された手に中身が空になった缶を乗せれば、すぐ傍にあるゴミ箱へ軽く放り投げる無陀野。
ゴミ箱の中で空き缶同士がぶつかる音を聞きながら、スズの脳内は今言われたことを必死に処理しようとする。
男性が女性に向けて発する言葉の中でも、かなりドキドキ度が高い分野のものであることは間違いない。
それを真顔で平然と言い放つ無陀野無人という男。
「(これは知らない間に女を泣かせてるタイプだな…)」
「スズ、置いてくぞ」
「あ、待って下さい!」
"勘違いしないようにしないと…!"
スズはそう肝に銘じて、無陀野が持つ仕込み傘をギュっと掴むのだった。
to be continued...
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