スズと無陀野が再び行動を開始してすぐ、街のどこかからドンという大きな爆発音が聞こえてきた。
2人が揃って目を向ければ、500m程先にあるビルが大量の煙に包まれているのが見える。
「無人先生、あれって…関係ありますか?」
「このタイミングで起こった以上、ないとは言い切れないな」
「行って確かめるのが早そうですね」
「そうだな。現場が荒らされる前に向かうぞ」
「はい!」
行き先を変更すると、2人はまた猛スピードで走り出した。
第30話 弱者の声
だが走り出して数十分が経った時、不意に無陀野は足を止めた。
そしてポケットに手を入れながら、勢い余って背中にぶつかって来たスズを気にかける。
「どわっ…!ごめんなさい、先生!」
「悪い、大丈夫か?」
「平気です!電話ですか?」
「あぁ、真澄からだ」
そう言ってスマホの着信画面を見せると、無陀野は通話ボタンとスピーカーのアイコンをタップした。
スズにも聞こえるように手のひらに乗せて声をかければ、スマホの向こうから慣れ親しんだ声が聞こえてくる。
「どうした」
『スズにも聞かせたい。スピーカーにしてあるか?』
「あぁ」
『今さっきの爆発のことだ』
「それなら今向かってる」
「私たち絡みですか?」
『そうだ。一ノ瀬が居場所を掴んだが、そこが爆破された』
「四季が…!」
「半グレは?」
『あの規模だ。恐らく全滅だろう』
「そんな…」
『一旦立て直す。アジトに戻れ』
「分かった」
淀川との通話を終え、スマホをポケットにしまった無陀野は、何かを考え込んでいるスズに気づく。
静かに声をかければ、彼女はゆっくりと自分の中にある考えを言葉にしていった。
「スズ?」
「…四季が行く先々で火にまつわる事件が起こってます。これで3件目です。いくら何でもおかしいですよね…?」
「確かに、偶然にしては重なり過ぎてるな」
「そうですよね…嫌な感じがするんです。こっちの行動が全部あやつられてるような…」
「今、真澄が情報を集めて整理してるところだろう。状況が見えてくれば、お前の気持ちももう少し落ち着くはずだ。とりあえず一旦戻るぞ」
「はい…!」
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スズと無陀野がアジトへ到着してから少しして、外に出ていた全員が再び顔を揃えた。
壁に背を預け座り込んでいる一ノ瀬が気になりつつも、スズは淀川の言葉に集中する。
偵察部隊の調査によれば、やはり半グレ集団は全滅したようだった。
「半グレは全滅。練馬の桃は警戒を強化。これで俺らは完全に受け身状態だな。唯一の収穫は神門って桃とその上司の存在だな」
「えっ…神門が、桃太郎…?本当ですか?」
「あぁ。スズも知ってんのか?」
「はい…でも、警察って言ってたから…」
「身分隠すのはよくあることだ。さっき一ノ瀬から聞いた話だと、皇后崎をさらった桃はその神門って桃の上司だな。
多分隊長で、一連の放火もそいつの仕業だろう。恐らく放火の目的は、最初から神門って奴に誤解させるため。
とにかく神門って桃とお前を意図的にぶつけたかったって感じか?
狡猾な奴だ。病院を放火するだけじゃなく、姉妹の家まで燃やすなんて。しかも全部一ノ瀬に疑惑が向くように計画されてる。
とどめは凄惨な現場で出会わせて、一ノ瀬を極悪な鬼に仕立て上げた。おかげで向こうはやる気満々になったみてぇだな」
そこまで聞いて、スズはようやく一ノ瀬が黙り込んでいる理由を理解した。
自分が教えた場所が悉く火事になるとあれば、神門が一ノ瀬に疑惑を持つのは当然のことだろう。
今回の半グレの居場所も、きっと神門を頼ったに違いない。
そしてそこで2人は出会わされてしまったのだ。
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