そうして新アジトへ到着した一行は、淀川から今回の作戦の全容を聞かされる。
リラックスした状態で耳を傾ける生徒たちの中で、スズだけは1人真面目にメモを取っていた。
一通り話し終えると場は一旦解散になったが、スズはすぐに淀川の元へ駆け寄り何やら話し始める。
興味からその後を追おうとした一ノ瀬を、無陀野はすかさず止めた。
「行くな」
「え、何で?」
「今あいつは真澄とこの後の動きについて大事な話をしてる。お前が行ったら邪魔になる」
「大事な話って…スズは援護部隊なんだし、そこまで熱心に聞かなくてよくね?」
「援護部隊だから聞くんだ。スズは作戦の細かい部分を知ってなきゃいけない」
「それって俺らが知っときゃいいんじゃねぇの?」
「…じゃあお前が桃と戦ってる時に、スズが突然現れたらどうする?」
「そんなの守るに決まってんじゃん!」
「自分の命が危険に晒されてもか?」
「当然!スズは戦えないんだから、俺が守らなきゃ死んじまう」
「援護部隊は、自分たちを守ることで戦闘部隊が死ぬことを一番恐れてる」
「えっ…」
「この戦争において、戦える人員が減ることは鬼の絶滅に直結する。そんな中で、本来彼らを救うべき存在の援護部隊が原因になることは許されない」
「じゃあさっき言ったみたいな状況になったら、スズを見殺しにすんのかよ」
「そうならないように、今スズは真澄と話をしてる。戦闘部隊と自分の身を守るために」
無陀野に倣って一ノ瀬もスズの方へ視線を向ける。
ノートを片手に淀川と話す彼女の表情は、普段の穏やかさからは程遠い、怖いくらい真剣な顔だった。
「援護部隊は戦いで傷ついた鬼を治すのが仕事だ。特にスズは現場に出てその仕事をすることが多い。
今誰がどこにいて、どの桃を相手にしているか。もし今ケガ人が出たらどこで治療ができるか。そういうことを考えながら動く必要があるんだ」
「だからあんなに真剣な顔で…」
「分かったら大人しくしてろ」
「…でもさ、いつも作戦通りいくわけじゃねぇだろ?あれだけ俺らのために頑張ってくれてても、どうしたって巻き込まれることはある。そん時は…」
「全力でスズを守れ」
「!」
「不測の事態は当然起こり得る。その時に自分とスズを守れるぐらい強くなれ。それがお前の仕事だ」
無陀野の言葉を受けた一ノ瀬は、スズの方を見つめながらグッと拳を握る。
自分からの視線に気づき、ふわっと微笑みかけてくれた天使の姿に、一ノ瀬は改めて想いを強くするのだった。
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30分後、新アジト内に侵入者が確認される。
VRゴーグルをつけた皇后崎と、その能力で彼の姿を隠していた淀川が出迎えたのを皮切りに、鬼側が一斉に姿を見せた。
「よお。会いたかったぜ、クソ野郎」
「こいつが一般人巻き込むカスか。顔に滲み出てんな、カス具合が」
「なんで…!」
「あれれー?深夜君、これってさー…一杯食わされたかな?」
侵入者は練馬の桃太郎・桃華月詠と桃角桜介、腰を抜かしている桃巌深夜に、その部下・桃寺神門の4人。
事前録画した映像をVRで皇后崎に見せることで深夜を騙す淀川の作戦は、見事にハマった。
自分が見ていたのと違う状況に焦りと恐怖の表情を見せる深夜に、皇后崎はお返しとばかりに睨みをきかせる。
「俺を拉致った時はずいぶんと楽しそうだったよな?今はどうだ?俺からのサプライズだぜ?笑えよ」
「(迅、めっちゃ悪役の顔してる…)」
「はは!ダセェな、深夜の奴!」
「まぁいいんじゃないの?どっちみち対面できたことに変わりないんだし。…決着つけようか」
to be continued...
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