向かい合った鬼と桃太郎。

人数的には圧倒的に不利な桃側だが、その顔に焦りや不安は微塵も感じられなかった。

むしろ余裕の笑みすら浮かべていた桜介が、ふと相手側の後方に立っていたとある人物を見つけ嬉しそうに声をかける。


「おっ!スズもいんじゃん!」

「ひっ…!」

「おーい、俺のこと覚えてっか?」

「あ〜彼女がスズか。初めまして。写真よりずっと可愛らしい子だね」

「俺がケガしたら頼むな〜!」


ごくごく自然にスズへ話しかけてくる練馬コンビに、鬼側の警戒心が一気に高まった。

急に話しかけられてビビるスズを、一番近くにいた無陀野がサッと背後に隠す。

そうして守られている彼女を、神門は悲しそうに見つめるのだった。


「(やっぱり君も鬼だったんだね…ハル)」





第32話 俺がやる





これだけの状況でも落ち着いている3人とは違い、唯一深夜だけは分かりやすく焦っていた。

能力的に戦闘向きではない彼にとって、人質のいない少数同士の戦いは最も避けるべきことである。

結果、3人を置いて1人一目散にその場から逃げ出した。

姉妹を危険な目に遭わせ皇后崎を不安にさせたことも、一ノ瀬と神門を仲違いさせたことも、全ての元凶は彼だ。

一連の出来事の黒幕が逃げていく姿を悔しそうに見つめるスズだったが、不意にその頭がポンと叩かれる。

そしてそれと同時に横を走り抜けたのは…


「迅…!」

「俺が行く」

「うん。気をつけて…!」


スズの言葉に頷いた皇后崎は、"絶対に逃がさない"という強い想いで深夜の後を追って行った。

次に動いたのは、深夜の部下である神門だ。

一ノ瀬に向ける目は、祭りの日とは程遠い冷酷なものだった。


「ケリをつけよう」

「ケリって何だよ!俺はな…!」

「喋るなよ。言ったろ?君の話は聞きたくないって」

「…っ!」

「ついてきなよ。2人になりたい」

「…」

「四季…」

「平気。ちょっとケンカしてくるだけ、だろ?」

「そうだね…!四季と神門なら、ちゃんと分かり合える」

「うん。行って来る」


スズと小声で言葉を交わし、前を歩く神門の後をついて行く一ノ瀬。

そんな教え子を見つめていた無陀野は、頼りになる同期に目配せする。

"四季を頼む"

阿吽の呼吸で彼の意図を理解し、淀川は姿を消して2人を追った。



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