さて、羅刹組と偵察コンビはどうしたかと言えば…
神門とのやり取りを終え、再び地下通路へ降りる扉の前に集合していた。
別れの挨拶をしながら、1人ずつ順番に中へと入って行く。
最後の1人を見送り、淀川が扉を閉めようとした瞬間、不意にそこからヒョコっと顔を出す人物がいた。
「スズ。どうした?忘れもんか?」
「いえ、そうじゃなくて…」
「ん?」
「あの…何から何までありがとうございました!たくさん迷惑かけちゃってごめんなさい。真澄さん達がいなかったら、今こうして皆で無事に帰れてないです」
「お前は何も謝るようなことしてねぇだろ。あいつらに早く一人前になれって伝えとけ」
「ふふっ。はい!本当にありがとうございました!今度何かお礼させて下さい。美味しいご飯とか!」
「んなのいいよ。気にすんな」
「でも…」
「…今お前が笑ってるってだけで、俺には十分お礼になってる」
「え?」
「俺はこの表情守るために動いただけだ」
そう言いながらスズの頬に触れる淀川。
目には、他の誰にも見せないような優しい光が宿っていた。
「あ、ありがとうございます…!真澄さん、何か…」
「何だ?」
「い、色気がすごい、というか…ドキドキ、します…!」
「! ふっ。お前そういうこと口に出すタイプなのか?」
「え、あ、いや、そんなことは…!」
「うん、分かりやすくていい。…お前が俺のこと少しでも意識してるって知れて良かったよ」
「?」
「…本気で行く、って言っただろ?」
スズの耳元で囁いた淀川は、大人っぽい笑みを口元に浮かべていた。
あの時の言葉がそういう意味だったと知った途端、スズの表情は段々と赤みを帯びていく。
そんな彼女の様子を面白がりながら、淀川はトーンを切り替えて声をかける。
「ほら、そろそろ行け。置いてかれんぞ」
「は、はい…!じゃあまた!」
「あぁ。死ぬなよ」
「もちろん!真澄さんもですよ!」
その言葉を聞き届け、淀川は今度こそ扉をしっかりと閉めた。
この後すぐに並木度にからかわれたのは言うまでもない。
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淀川・並木度コンビと別れた無陀野組は、皆でゾロゾロと地下通路を行く。
死者を出さずに全ての戦いが終わったことで、帰り道の空気はとても穏やかだ。
「あーあ。しばらくゆっくり休みてぇなー」
「明日からすぐまた修行だ」
「最悪じゃん!」
「なんでさっきの桃殺さねぇんだよオイ!」
「僕はまだ東京にいたい!帆稀さん!ディスティニーランド行きましょう!」
「え…?」
「疲れたろ?帰ったらマッサージしてやるよ。朝までな…」
「いや…大丈夫です…」
「…」
「はは!楽しいね、ダノッチ!」
「お前ら、黙れ」
「あの!この後皆でご飯食べに行きませんか!」
"お疲れ様会と、京夜先生の歓迎会ってことで!"
スズの提案に一ノ瀬と花魁坂は真っ先に賛成の意を示す。
他のメンバーもお腹が減っているので、反対する者はいない。
あとは無陀野だけだが…
「…さっさと食べて、さっさと帰るぞ」
「やった!ありがとうございます、無人先生!」
他でもない秘書の頼みとあれば無下にもできず、彼女の笑顔に免じて許可を出した。
どこ行く?何食べる?とまた賑やかさが増す一行を、スズは場の後方でニコニコしながら見つめていた。
歩くスピードを遅くして隣に並んだ皇后崎は、そんな彼女に話しかける。
「何、笑ってんだよ」
「ん〜?こうやって皆で無事に帰れて良かったな〜と思って」
「そうだな」
「迅もいろいろあって疲れたでしょ。お疲れ様!」
「あぁ。スズもお疲れ」
「ありがと!…何かまだ迅に名前で呼ばれるの慣れなくて恥ずかしいわ…!」
「! …すぐ慣れる」
「そうかな〜」
「これから死ぬほど呼んでやるから大丈夫だよ…スズ」
「ちょっ!耳元は、ダメって言ったでしょ…!」
「ふっ。そうだっけか?」
「あー!おい、皇后崎!スズに手出すなって!」
こうして、練馬を舞台にした大騒動は幕を閉じた。
新たな出会い、鬼神の力、芽生えた気持ち…
多感な若者たちにとっては、実に刺激的な出来事ばかりだった。
生まれた様々な感情を胸に、彼らは次なるステップへ!
第2章 fin.
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