合流した2人が墓地を歩いていると、ある墓石の前に佇む担任の姿を発見する。
午前中のキッチリした服装と髪型ではなく、どちらもラフな状態の完全プライベートモード。
珍しく露出している腕には、肘の下あたりまで黒塗りの刺青が入っていた。
「ムダ先、刺青入ってたのかよ!」
「あー…うん。確かに入ってるね。でもあれは…」
「見せてもらお…!」
「四季、それは「ハイ、待った」
今にも無陀野へ駆け寄ろうとしている一ノ瀬を止めたのは、通りがかった花魁坂だった。
声をかけようとしていたスズに代わって、場所が場所だから今は止めておけと彼は注意を促す。
しかし担任の意外な趣味に、一ノ瀬は興味津々。
元々そういうものが好きだったこともあり、彼は完成を楽しみにしていた。
そんな姿に、花魁坂とスズは少し沈んだ表情で顔を見合わせた。
「…ダノッチはあの刺青、一生完成してほしくないと思うよ」
「は?なんでよ?」
「あの刺青は、仲間が死ぬ度に彫り進められてるんだ」
「え…?」
「つまり完成に近づくってことは、それだけ仲間が死ぬってことさ。忘れないためか…自分への戒めか。ダノッチって厳しいでしょ?」
「うん」
「死なないために強くなってほしいからこそだと思うよ。スズも相当鍛えられたもんね」
「そうですね。お陰でまだ生きてます」
「ってこと。厳しさは愛情の裏返しと思ってくれたらさ、ダノッチの友達としては嬉しいかな」
静かに話す花魁坂の言葉を受け、一ノ瀬は唇を噛む。
そして何を思ったか、突然声を張り上げるのだった。
「ムダ先!」
「…」
「俺は死なねぇぞ!バチバチに強くなって、誰も死なせねぇからよ!
残念ながらその刺青は永久に未完成だぜ!今まで以上に厳しく来ても余裕だぜ!」
「……墓地で大声を出すな。非常識だ」
「ほほー!これも愛情ってやつだな」
「いや、これはシンプルに注意だね」
「えぇ!?」
「ふふっ」
いつも通り無陀野の表情は変わらないが、一ノ瀬の真っ直ぐな想いはきっと届いているだろう。
花魁坂とスズは互いに笑顔を向け合った後、そんな2人を微笑ましく見つめるのだった。
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