黒城で留守番中の出雲。
瓦礫の片づけが終わり、一息ついたところで聞こえてくる門番の"開門ー!!"という声。
このタイミングで帰って来るのは我らが主達以外にない。
「お帰りなさ…い…」
「うむ、今帰ったぞ」
「うわぁ…酷い格好」
嬉しそうに出迎えた出雲だったが、ボロボロな状態で帰って来た仲間の姿に呆れた表情を見せた。
第6話 帰城
文月と白露の姿を確認した後に気になるのは、紅一点の彼女のこと。
出雲は、嵐丸を大事に抱えているスズの元へと駆け寄った。
「スズは?ケガとかしてないよね?」
「うん、平気!」
「良かった〜」
「ふふっ。ありがとう!…あ、そうだ。嵐丸のことお願いしてもいい?私、皆の湯浴みの準備してくるからさ」
「いいよ、任せて」
「えっ、スズ行っちゃうのか!?」
「少しだけね!大丈夫。誰も怖いことしないから」
不安な顔を向けてくる嵐丸の頭を撫でながら笑みを向けると、スズは速足で城内へと入っていった。
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文月のお風呂好きが高じて、黒城は天然温泉が湧いている土地に建てられた。
故に内風呂も外風呂も温泉使いたい放題。何とも贅沢な話である。
湯浴みの準備というのはいつもスズや出雲がやっている家事の1つで、各自の湯上り着や手拭いを整えたり、露天風呂の枯葉を掃除したりするのだ。
今日からは嵐丸も仲間入りしたため、小さい桶も準備しておく。
「(嵐丸用の湯上り着もあとで作っておこーっと!)」
スズの術式があれば、割と簡単に着物や帯を作ることができる。
少し凝ったものとなると、出雲と協力して繕うこともあるが、部屋着などはパパッとやってしまうことが多い。
どんなものにしようかイメージを膨らませながら広間へと戻っていたスズは、不意に泣き声を耳にする。
静かに襖を開ければ、涙を流す嵐丸と向かい合う出雲の姿があった。
「大丈夫…?」
「僕が嵐丸の形見を触ろうとして驚かせちゃったんだ」
「そうだったの…」
「ごめんね、大切な物に触ってしまって。でも大切な形見なら尚のこと、一度綺麗にしてあげようよ。
洗い方を教えるからさ。その方がお母さんも喜ぶんじゃないかな。ねっ、スズ?」
「うん、私もそう思う。洗っても、お母さんとの思い出は消えたりしないから。ずっと一緒にいられるように、しっかり汚れ落とさないとね」
「……うん…」
落ち着いた様子の嵐丸を見て、スズと出雲は笑顔を向け合う。
この城において文月と白露が前線に出て皆を護る父だとしたら、スズと出雲はそれを陰ながら支える母のような存在だ。
2人の温かい言葉と表情に、嵐丸の気持ちが少し前向きになったのは間違いないだろう。
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