スズと出雲に連れられて、露天風呂へとやって来た嵐丸。

用意しておいた桶に湯を溜めそこへ入れてやると、何とも気持ち良さそうな表情を見せる。

出雲に上からお湯をかけられれば、幼き半妖はさらに良い顔になっていった。


「お加減いかがですかー?」

「(きもちいいい…)」

「ふふっ。いい顔になってるね〜あ、私ちょっと手拭い取ってくる!」

「うん、ありがとう!」


嵐丸を出雲に任せ、スズは一旦風呂場を出て行く。

お湯をかけてやりながら母とのことを尋ねれば、1年前に死んでしまったのだと嵐丸は言葉を返した。

共に山へ行った際、母の方だけ妖怪に攫われてしまったのだと。


「散々捜したけど…見つからなかった。村の奴らが言ってた…母ちゃんはもう喰われちまってるだろうって」

「きっと優しいお母さんだったんだね」

「嵐丸がこんなにいい子に育ってるのを見れば、絶対そうだと思う」


戻って来たスズが手拭いを出雲に渡しながら、そう言って微笑む。

出雲から頭に手拭いを乗せられた嵐丸は、世間話をするように2人へ母の話題を振った。


「…お前の母ちゃんは?」

「僕に家族はいないよ。生憎そういうのに縁がなくてね」

「スズは…?」

「私も小さい頃に2人とも死んじゃってる」

「ご、ごめん。おいら…」

「気にしなくて大丈夫だよ。もうちゃんと整理ついてるから」

「…この城にいるのは、そんな連中ばかりさ」

「("ばかり"…?それって…じゃあ…文月あいつも…?)」


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その文月はといえば、妖兄弟から取り返した手甲を陰陽術を使って封印しているところであった。

と、そこへいつになく表情の硬い白露が姿を見せる。

話す話題は、神器集めを終えた後の嵐丸の処遇についてだった。

神器を取り出すために彼を殺すと主張する文月と、それを阻止したい白露。

話は平行線で、和室は一触即発の雰囲気になる。

そんな部屋に向かって、パタパタと可愛らしい足音が聞こえてきた。


「主ーっ!嵐丸の部屋は僕達の隣でいいかなー?」

「あ、出雲そのことだけどさ〜1人で寝せるの可哀想だから私の部屋に…」


湯上りでほくほくの嵐丸を抱えた出雲と、2人の後を追って走って来たスズは室内の微妙な空気を敏感に感じ取る。

顔を見合わせた母コンビを代表して、出雲が声をかけた。


「…え、ナニコレ。えーと…喧嘩?なら外でやってね。せっかく片づけたんだから」

「…興が醒めたわ。部屋はお前らの隣で良い。逃がさぬよう見張りを怠るなよ」

「だから文月、私の部屋で一緒に「それだけはならぬ」

「えー…」

「それよりスズ、余の湯上り着を「露天の方に準備してあるよ!」

「……手拭いがもう1枚必要だから持って来てくれ」

「え、いつも使う枚数だけ置いて「いいから。持って来るように」

「…御意」


スズの返事を満足そうに聞いた文月は、静かに露天風呂の方へと向かった。

主を見送った母コンビは、残っている白露へと目を向ける。


「何かあった?」

「…いや」

「白露も湯浴み行っておいでよ。衣、洗っておくからさ」

「…あぁ」

「内風呂の方に準備してあるからね」

「ありがとう、スズ」


彼女へ少し笑みを向けた白露は、文月とは逆の方へと歩いて行った。



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