無事に自己紹介が済み、晴れて友達となったスズと嵐丸。

倒れた時に散らばった木の実を2人で拾いながら、スズは"さっきみたいなことはよくあるの?"と問いかけた。


「うん。おいら半妖だから、人間の中にも妖の中にも入れてもらえねェんだ…」

「……私も少し似てるかも」

「スズも?」

「私、一応陰陽師なんだけど…妖を倒す力はないの」

「そんなことあるのか?」

「だいぶ珍しいんだけどね。その代わり…」


そう言いながら、スズはパチンと指を鳴らす。

と同時に彼女の手には、可愛らしい花が生けられた小さな花瓶が現れた。

奇術のような出来事に、嵐丸は目を見開いた。


「こういう争いと関係ないものを生み出す力があるんだ」

「すげェ!!」

「ありがと。でも陰陽師としては役に立たない力だから、私も陰陽師の仲間には入れてもらえないの」

「…いじめられたりするのか?」

「うーん…いじめというよりは、小馬鹿にされる感じかな」

「おいらがもっと強ければ、そいつら皆ボコボコにしてやるのに…」

「ふふっ。嵐丸は優しいね」

「おいらはスズの力好きだぞ!」

「! ありがとう。そう言ってもらえると嬉しい…!」


幼少期、同じことを言ってくれた人物の顔が浮かぶ。

その時も、今のように心が温かくなったのをハッキリ覚えている。

それからもうしばらく会話を楽しんだ2人は、"また会おう"と約束を交わし別れた。

しかしそれから数分も経たぬうちに、スズは胸騒ぎを覚え嵐丸の家の方を振り返る。

一瞬何かが家から出て行ったような気配を感じたものの、辺りにそれらしい姿はない。

気のせいかと思い、スズは再び歩き始めた。

そんな彼女に向かって、2つの足音が近づいてくる。


「スズ、こんなところにいたのか」

「今日は随分遠くまで来てたんだな」

「文月!白露!」


声をかけて来たのは、スズと寝食を共にしている花山文月と獣妖怪の白露であった。

例の神器盗難の件で朝から動いていた2人。

彼らがここにいるということは、神器を盗んだ妖がこの辺りにいるのかもしれない。

そう考えたスズは、先程感じた怪しい気配のことを伝えた。


「あの家か…」

「見に行ってみるか?」

「うむ。スズはここで待っていろ」

「うん…」

「ふっ。大丈夫、すぐ戻る」


不安そうな表情を見せるスズに、白露はそう言いながら微笑みかける。

優しく頭を撫でてくる彼に"気をつけて"と笑顔を向けて、スズは2人を見送った。


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白露の言う通り、2人は10分とかからずに戻って来た。

服の乱れが一切ないところを見ると、どうやらスズの読みは外れたようだ。


「何もいなかった」

「じゃあやっぱり私の見間違いか…余計なこと言ってごめんね」

「いや、そうとも言えぬ。家の奥に怪しい血痕があった」

「えっ!?」

「…スズ、ここであの童の見張りを頼む」

「見張り?」

「再び怪しい気配を感じたら、余に伝令を飛ばせ」

「分かった!」

「護衛で俺も残った方がいいんじゃないか?」

「妖が戻ってくる保証はない。人員を割くなら追跡の方だ」

「ありがとう白露!こっちは大丈夫。白露の嗅覚がないと、文月だけじゃ一生見つけられないかもしれないし!」


睨みをきかせる文月に気づかないフリをしながら、スズは明るい笑顔を向けた。

不安は残るものの、彼女のその笑顔に白露は渋々首を縦に振るのだった。

そうして白露は妖の血の臭いを探りながら歩き始めた。

その後を追う文月だったが、不意に立ち止まるとスズを振り返る。


「文月?」

「少しでも危険を感じたらすぐに退け。妖は二の次で良い」

「あ、うん」

「…無茶をして傷つくことは許さぬ。良いな?」

「ふふっ。はい!文月も気をつけてね」

「あぁ。頼んだぞ」


かける言葉は少ないが、スズのことを心配しているのは文月も同じ。

少し口角を上げた彼は、スズの頭をポンと叩いてからその場を後にした。


物影に身を潜め、持って来ていたお菓子を食べながら嵐丸の家を見張るスズ。

嫌な気配を微塵も感じないまま時は過ぎ、辺りは段々と暗さを増していく。

夜は妖が活発になる時間だ…







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