20年前、とある村に住む陰陽師の家に1人の可愛らしい娘が産まれた。

両親からの愛情をたっぷり受けて育った少女は、すくすくと成長していく。

それに伴い、当然陰陽師の力も開花するはずだったのだが…


「おかしいわね〜」

「そうだな〜」


札を渡しても、呪文を教えても、少女の力は一向に発現しなかった。

普通であれば焦ったり怒ったり、子供に対して何かしらの行動を起こすだろう。

だがここの両親はとても穏やかだった。


「ん〜まぁいいか。そのうち何か目覚めるだろ!」

「そうですね。のんびり構えてましょう」





第11話 とある村の風優方士





そんなほんわかした環境で過ごしていたある日、スズの力が不意に開花した。

それは退魔の力でも、回復の力でも、未来を読む力でもなく…


「父上、母上!見て下さい!」

「あら、キレイなお花!」

「こっちの茶器も美しい模様だな〜」


子に呼ばれ駆けつけてみれば、スズの周りには実に様々なものが置かれていた。

色鮮やかな花や着物、美味しそうな和菓子に複雑な模様が入った器、美しい音を響かせそうな楽器まである。

最初はスズがどこからか持ってきたのかと思ったが、どれもこれも家の中はもちろん、村内でも見たことのない代物であった。

となると考えられるのは…


「もしかして…これはスズが出したのかい?」

「はい!今日は父上と母上が夫婦になられた日だと前に聞きましたので、何か贈り物をと考えていたら…!」

「出てきたのですか?」

「そうです!お花もお菓子もたくさん出てきました!」

「あなた、これがこの子の…!」

「あぁ、実に素晴らしい力だ!」


スズに目覚めたのは、陰陽師とはかけ離れた力。

風流で、優雅な、争いとは無縁のものを生み出す力であった。

夫婦は、この風変わりだが周りを幸せにする力を大いに喜んだ。


「あなた、この子に陰陽師という肩書きは似合わないんじゃないかしら」

「うむ、確かにそうだな。んー…ではこういうのはどうだろう。風流で優雅なものを生み出す方士…風優方士というのは!」

「まぁ素敵!」

「父上、"ほうし"とはどういう意味ですか?」

「陰陽師のことをそういう風に呼ぶこともあるんだ。キレイな言葉だろう?」

「はい、とっても!」

「ふふっ。じゃあスズは今日から風優方士ね!」


両親によって与えられた力と肩書きを、スズはとても気に入っていた。

好きだからこそもっと上達したいと思い、彼女はあちこちへ出かけては様々なものを見聞きした。

そうして、生み出すものの質は日に日に向上していくのだった。


しかし身内では歓迎されたこの力も、ひとたび外へ出れば異端なものとみなされる。

同じ歳の子供達が少しずつ陰陽術を身につけていく中で、スズはそれが何一つできない。

代わりに備わっている力は、見る人によっては何の価値もないと思われてしまう。

表立って馬鹿にされることもあれば、裏でコソコソと笑われたこともあった。

そんな日々が続くうち、"風優方士"と名付けられ喜んでいたあの頃のスズは見る影もなくなってしまった。



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