"そういえば、スズはどうして友がいないのだ?"

"よくそんな聞きづらいこと聞けるね…"

"もうそんなこと気にする仲ではないだろう"

"まぁそうだけど……んー初めは、自分の力をからかわれたことがキッカケかな。

ほら、私の力って他の人と違うでしょ?そういうのって普通は気味悪がられるけど、私の場合はそれすらなかった。

花とかお菓子とか出すだけの何の価値もない力だ〜って散々馬鹿にされて…心が折れちゃったんだよね"

"花も菓子も出せないくせに、よくそんなことを言えたものだな"

"ふふっ。私も今ならそうやって言い返せると思うんだけど…その時は出来なかった。

だから自分から周りと距離を置いた。関わって傷つくなら、関わらない方がいいって思っちゃったんだ。

でもさ!今は文月達がいる。味方になってくれる人がいるって、すごく心があったかくなるんだ。ありがとう!"

"! …そうか"

"文月こそ、よく私と友達になってくれたよね"

"ならない理由がない。お前は面白いし、話していると楽しい。それに…"

"ん?"

"俺はスズの力が好きだ"





第13話 雅血の兄弟 ー中ー





幼き日々を辿る旅を終え、視点は再び現在へと戻ってくる。

蒼士と昔話に花を咲かせながら、スズはふと文月との懐かしいやり取りを思い出す。

今と変わらない強気な性格や、お礼を伝えた後の、今ではあまり見せないはにかんだ笑顔。

そして何より最後に彼が言ってくれた言葉は、今でもスズにとって大きな支えとなっていた。

と、不意に蒼士が外へと目を向ける。


「おっ、どうやら話し合いが終わったようだ」

「あ、本当ですね。あぁやって2人が一緒に歩いているのを見るのは、何だか久しぶりな気がします」

「昔はあそこにスズも加わった3人の姿が、大人達の癒しであったのだぞ?」

「そ、そうだったのですか…!」


照れ臭そうにするスズに微笑みかけながら、蒼士は彼女と共に部屋を出る。

そして日向と別れ、1人で歩いていた文月と廊下で合流するのだった。


「話は済んだか?」

「蒼士か…此度は気苦労をかけた」

「気苦労?そんなもの…めちゃくちゃ心配したに決まってるでしょうがァアア!ケガは!?どこ!!蒼士に診せなさい、ホレ!!」

「もう治っている。離せ、暑い」

「ふふっ」


先程までの大人びた立ち居振る舞いが嘘のように、蒼士はガバッと文月を抱き締めた。

大切な甥の体を気にかけるその姿は、どこにでもいる普通の人であった。

微笑ましくやり取りを見守っていたスズに、呆れた表情で目配せをしてくる文月はどこか幼さを感じさせる。

一城の主といえど、ここではまだまだ子供扱いなのだ。

ようやく離れた蒼士に対し、文月はいつもの調子で声をかける。


「こうして日向と話ができるのも、お前の手引きのお陰だな。礼を言う」

「本当にありがとうございます、蒼士様」

「これしきのこと…可愛い甥っ子達とその大切な幼馴染のためなら造作もない」

「もう行く。日向のことは頼んだ。スズ」

「あ、うん」

「文月よ。スズ共々、くれぐれも死ぬなよ。帝にはまだお前達が必要だ」


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蒼士と別れた幼馴染コンビは、静まり返った廊下を進む。

何か考え事をしているのか、少し俯きながら歩くスズへ文月は静かに話しかけた。


「待たせてすまぬ。居心地が悪かったであろう」

「ううん、平気だよ!蒼士様が傍にいてくださったから。ただ…白露のことが気になって。大丈夫、だよね?」

「案ずるな。あいつは頑丈さが取り柄だ」

「そうだよね…!」

「それより、蒼士と何を話していたのだ?」

「いろいろお話したけど、主には私達が小さい時の話かな。…文月さ、あれ覚えてる?」

「ん?」

「2人で決めた合図みたいなやつ。離れてても会話ができるように〜って」

「…」

「…あ、まぁ、すごく昔のことだし、覚えてないよね!ごめん、変なこと聞いて!」


無理やり明るい口調に切り替え、慌てて会話を終えようとするスズ。

だがふと文月の方に目を向けると、その顔はパッと明るくなった。

目線の先には、右耳を触る幼馴染の姿があった。


「覚えてたんだ…!」

「ふっ、当然だ。こんなことまで蒼士と話したのか?」

「いや、これは私が勝手に思い出しただけ。文月も覚えててくれたら嬉しいな〜と思って聞いてみたの」

「スズとの良き思い出だ。忘れるわけない」

「へへっ。そっか!」


何とも嬉しそうにしているスズをしばし見つめていた文月は、良い考えが浮かび足を止めた。

つられて立ち止まり、自分を見上げてくる幼馴染に、彼は微笑みかける。


「文月?」

「今日は急にこんなとこに連れて来られて、さぞ疲れたであろう?」

「え、あ、うん…まぁ…」

「城へ帰ったら、俺がたんと甘やかしてやる」

「へ?」

「俺に何をして欲しいか、着くまでに考えておけ」


微笑みが妖しい方へと変わったかと思えば、文月はスズの耳元でそう囁いた。

彼の色っぽい雰囲気に押され、スズは赤い顔のまま首を何度も縦に振るのだった。



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