そうして到着した広間で、黒城組はやっと合流することができた。
体を起こしている白露を見ると、スズは泣き笑いのような表情になる。
文月も文月で、顔と言葉には出ないが安心しているようだった。
「よし、生きているな。帝から童を傍に置く許可をいただいた。帰るぞ」
「白露!」
そう名前を呼ぶと、スズは座っている彼の傍へ行きギュッと抱きついた。
"良かった…"と心底安心した声で呟くスズを、白露もまた愛おしそうに強く抱き締める。
「心配かけてすまない。…怖がらせただろ?」
「そんなことない!白露は白露だから。何も怖くないよ」
「…ありがとう。やっぱりスズの匂いは落ち着く。帰ってきた感じがする」
「おかえり、白露」
「あぁ、ただいま」
「おいらもスズの匂い好きだぞ」
「ふふっ、ありがとう。嵐丸も無事で良かった」
傍にいた嵐丸も、そう言いながら2人の元へ寄って来る。
自分の着物の裾をキュッと握ってくる幼き存在に母性が刺激され、スズは彼のことも抱き寄せた。
スズと白露と、その間で嬉しそうにしている嵐丸の光景はさながら家族のようであった。
それを面白くなさそうに見つめていた文月。
彼が不満げに投げかけた2回目の"帰るぞ"で、3人はやっと腰を上げるのだった。
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支度を整え、朝廷に描かれた陣の方へ向かっていた4人。
そこへ背後から聞き覚えのある声が飛んでくる。
「あっ」
「!」
「白露ちゃーん。今日は楽しかったなァ、オイ。お前とはまた殺り合いてぇなァ。今度は真剣同士でよォ」
「俺はお前に二度と会いたくない。顔も見たくない」
「おまっ、つれねーこと言うなよォ!」
「うるさい。どっか行け」
相棒同士の幼稚なやり取りを、主2人は無言で見やる。
豊親の気まずそうな表情に、スズはバレないよう笑みを漏らした。
「…言っておくが、俺はお前を信用したわけじゃないからな」
「豊親よ…式神の躾くらいちゃんとしておけ。アレでは見るに堪えん」
「アレは…っ、元々ああなんだよ。コレでもマシになった方で…」
「小さい頃に少し話してくれた、あの封印されてた妖なんだよね?」
「あぁ。…覚えててくれたんだな、そんな話」
「うん!豊親が"いつか召喚するんだ!"ってすごく熱心に話してたから記憶に残ってる」
「! そうか」
「でも見覚えがあるから不思議だな〜って思ってたんだけど、その時に見せてくれた想像の絵と同じ姿だったからなんだね」
「見た目は同じだったんだがな…」
「ふふっ。性格は随分破天荒みたいだね」
久しぶりの3ショットで他愛のない話をしていたスズ達。
だがそれも長くは続かない。
和やかな雰囲気が一転、豊親は真面目な顔であの日のことを話し出した。
「都襲撃の事件当夜…"都の陰陽師達は何をしていたのか"と訊いたな。
俺達は皆、都の外へ出払っていた。其々別の任務があったからだ。あの日の都の警備は兵士のみだったのだ」
「…では妖共はそれを見計らって…?」
「恐らく…な」
「(となると、裏切り者説が濃厚になってくるってことだよね…)」
以前城の風呂で文月と話したことを思い出し、スズは表情を暗くする。
内部の人間に協力者がいないと、そんな極端な状況は出来上がらないだろう。
いろいろ思うことはあれど、兎にも角にも4人は城へと戻るべく陣の中へ入った。
周辺が光に包まれる中、豊親が再び声をかける。
「忘れるなよ、文月」
「!」
「勝手な真似をしたら、次こそ俺がお前を始末するからな」
「…それは楽しみだ」
光の眩しさに目を閉じたスズは、文月がどんな顔をしていたか見えなかった。
次に目を開けた時、彼女は見慣れた和室に立っていた。
こうして長く濃い1日がようやく終わりを迎えるのだった。
続
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