"力が自慢のようだな。そういうことなら俺が相手になってやる"
そんな頼もしい台詞と共に参上した文月の相棒・白露。
あの大柄な伴猟の攻撃を跳ね返すほどの怪力に旺猟は目を見開き、一時言葉を失った。
第5話 白露と嵐丸
嵐丸を抱えている幼馴染が立ち上がるのに手を貸すと、文月は相棒の隣へ並び妖兄弟を見やった。
味方が増えたことに笑みを見せるスズだったが、そもそも何故2人は一緒に来なかったのかという疑問が浮かぶ。
その答えはすぐに白露が教えてくれた。
「遅いぞ白露。何をしていた?」
「…お前が押しつけた妖共を片づけていたんだが」
「うむ、そうであった。ご苦労」
「あっ!あの乗り込んで来た妖、白露が対応してくれたんだ…!ありがとう!ケガしてない?」
「大丈夫だ。スズの方こそ傷が…」
「ふふっ、皆優しいね。平気だよ!」
「ならいいが…痕が残らないように、帰ったらちゃんと手当てするんだぞ」
穏やかな声でそう言いながら頭を撫でてくる白露に、スズは"了解!"と明るく言葉を返すのだった。
そのやり取りが終わるのを待って、文月は不意にスズの手から幼き半妖を取り上げる。
そして驚く幼馴染を無視し、彼は嵐丸を白露の方へと放り投げた。
「ぎゃ!」
「ちょっと文月!何するの!」
「童を守れ。絶対取られるなよ。奴らは神器を持っている。デカイ方はお前に任せた」
「…いや、ちょっと待…」
「戦うなら、白露より私が預かってた方が…!」
「終わったら合流しろ。…そういうことだ。行くぞスズ」
「!? おいっ」「えっ!?」
スズの発言を無視し続けていたかと思えば次の瞬間、彼女を俵担ぎにして走り出す文月。
唖然とする白露と嵐丸がどんどん小さくなっていく中、スズの頭は混乱するばかりだった。
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数分ほど走り、一旦さっきまでいた場所から離れた幼馴染コンビ。
茂みの中でスズを降ろすと、文月はいろいろ聞きたそうな彼女の唇に人差し指を当てて黙らせる。
自分の指示に対し素直に頷くスズへ満足そうに微笑みかけながら、彼は自分の行動の真意を話し始めた。
「俺の話を聞け」
「…」
「ふっ、よし。あの妖共は童を狙ってる。スズが抱えていれば、当然あいつらはお前にも危害を加える。その時に対抗できるか?」
「…できない、です」
「そういうことだ。…スズが傷つくのを見たくない」
「! 分かった。大人しくしてる」
「うむ、素直で良い」
優しくそう言う文月は穏やかな表情を見せる。
だが一方の幼馴染はといえば、終始不安そうな顔のまま。
弟ほどの体格と力こそないが、兄もかなりの強者だから…
「…無事に帰って来てね」
「無論だ。すぐ終わらせてくる」
「うん。待ってる!」
「城に帰ったら、俺を癒せよ?」
「任せて!肩でも腰でももんであげる!」
「はぁ…色気がない奴だな。膝枕ぐらい言えないのか?」
「えっ、それ癒しになる?」
「なるから言ってる」
「そっか!じゃあ膝枕しながらもみほぐしも…は、できないか?」
「ふっ。戻ったらどうやるか聞かせろ」
いつもの調子に戻ったスズの頭をポンと叩くと、文月は彼女を残し茂みを出て行った。
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